【24年6月更新】新基準のタイムライン発表

【24年6月更新】新基準のタイムライン発表

2020年末にキックオフされたB Corp認証基準の大改訂。二度のパブリックコメント募集やグループインタビューなどを経て、2024年内に新基準が完了する見込みで、具体的に準拠対応が求められるのは2026年と提示されていたが、この度改めてB Labから発表があった。

Balancing Ambition and Continuity as We Implement Our New Standards」と題して発表されたリリースでは、上記タイムライン通りに進んでいくことに加え、EUで検討されている新規制にも対応し、B Corpコミュニティ全体での底上げを目指していくことへの強い意志を表明。また、単なるB Corp認証基準のグレードアップではなく、社会全体の変革を目指すムーブメントとして、認証取得だけが目的ではない、あらゆる企業の変革手段として、ツールやプログラムの開発に動いていることがわかる。

リリースの内容は大きく下記5つのポイントである。

・新基準開発完了の見込み
・新ツールの開発
・新規制に対応した認証プロセス
・B Corpコミュニティのアップスキリング
・新基準への移行方法

B-Corp-新基準準拠のタイムライン
B Lab発表のタイムラインに筆者加筆

 

新基準開発完了の見込み

2024年1月に新基準の最終ドラフトが発表され、3月末まで意見の公募が行われた。フォームへの回答に加え、いくつかのフォーカスグループでもフィードバックの募集が行われ、最終的に1,000 人以上の回答者からの16,000 件を超えるフィードバックを受けた。B Labメンバーはグローバルに点在しているが、基準開発チームメンバーはアムステルダムに集まり、その内容について精査、今後のステップを議論、9月までにはその結果を公表することを約束している。最終ドラフトは現在も公開されており、今後の変更が見込まれるものの、参照することができる。年内には基準諮問委員会の承認を経て、確定版の公開に踏み切る予定だ。

 

新ツールの開発

今回の基準改定では単なる内容の変更だけでなく、現行のアセスメントツールであるB Impact Assessment (BIA)にもメスが入れられる。「新しいデジタルエクスペリエンス」と表現され、その名も「B Impact」となる模様だ。BIAはこれまでも誰でも無料で登録でき、認証取得を目指す/目指さない・非営利機関・個人問わず、アセスメントの内容を見ることができた。今後は登録の入口で、認証を申請するつもりなのか、組織の環境・社会的影響を測定し改善することが目的なのか、それに応じてユーザーエクスペリエンスが変わるような仕組みを考えている。また、これまでは企業の認証資格があるかどうかはFAQなどに記載があるものの、認証プロセスの途中で選択する業種の変更や取得要件を満たさないことが判明するなどがあったが、今後はシステム上でクリアになるようロジックを組み、シームレスな体験を目指している。数ヶ月以内にいくつか選ばれた企業に対しベータ版のテストを開始、2025年初めには全てのユーザーに展開する予定だ。新基準の内容がまだ確定していないため同時並行での開発となっているが、2025年後半には新基準の内容で実際に数値などを入力できるものが公開できるように準備している。

なお、現行で申請をしたいが、企業の業種や規模、認証資格などについて不安がある場合は、B Labの日本の窓口であるB Market Builder Japanに問い合わせると良い。

 

新規制に対応した認証プロセス

そもそもB Corp認証の始まりは、株主至上主義一辺倒ではなく、より多くのステークホルダーを迎え入れ、よりよい経済システムを目指すことに始まる。B Corp認証発祥の地・アメリカでは、ステークホルダー主義で経営ができるよう会社法を変える働きかけを行い、約40の州でベネフィット・コーポレーション法が制定されている。この動きはラテンアメリカやヨーロッパのいくつかの国で展開され、イギリスでは会社法そのものにステークホルダー経営を入れ込むよう働きかけを続けている。

近年は、いよいよ気候変動の実被害や様々な人権問題の露呈により、EUを始めとして企業に対して社会的責任を問う規制が相次いで発表されている。B Corpコミュニティはサステナビリティに関する表示の厳格化、企業の責任追及、消費者のニーズを重視するために世界中で提案され採用されている多くの新しい法律を引き続き支持していく、として、新基準にもそうした規制への対応ができるよう取り込んでいく。

特にEmpowering Consumers Directive(ECD)と Green Claims Directive(GCD)の2つの規制に注目している。ECDは、アンフェアな企業慣行から消費者を保護し、企業からのより明確な情報発信を奨励、根拠のない「環境にやさしい」といった表示を禁止し、サステナビリティに関する表示に厳格な要件を適用することにより、グリーン移行に向けて消費者を支援することを目的としている。GCDは、企業が広告や製品ラベルで誤解を招くような環境に関する表現を規制するための要件を提案している。B Labとしてもこれらの新しい指令の影響については速やかに共有することを約束している。

また認証プロセスそのものについても検討している。これまではB Labが認証プロセスを実施するという立て付けであったが、こうした規制の動きを受けて、真に規制に対応した企業行動ができていると保証できるのか、外部の認証発行機関とも連携しながら協議を進めている。

さらには、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)と重複する部分については既に特定しており、そのフレームワークを用いた報告指令・企業サステナビリティ報告指令(CSRD)をやっていればB Corp要件を満たす、またその逆も然り、といったような相互運用性についても引き続き考慮される(CSRD/ESRSについてはこちらを参照)。

  

B Corpコミュニティのアップスキリングと新基準への移行方法

新基準開発については、その発表当初から賛成意見が大多数であった。200点を超える満点中の80点、どの領域でも取り組んで良いという現行基準から、必ず指定された項目について取り組まなければ認証を取得できないという新基準案について、いわば厳格になる方向性であるが、現在の認証企業も多くが賛成であった。一方で、移行にはかなりの時間を要するのではないかという声が多く寄せられているようだ。

まずはB Lab組織内やB Corp認証の取得支援者を含めてアップスキリングの方法について検討されている。支部ができた日本においても今後新基準へ対応していくための情報発信が積極的に展開されることが期待できる。既にB Corpについて関心のある個人や認証企業の担当者・経営者などが集まるオンラインコミュニティ「School of B Corp」でも、新基準を見据えた勉強会などが盛んに開催されている。新基準ドラフトは誰でも見られるように公開されているものであり、こうした動きはB Labや認証企業に限らず、認証を目指す企業やB Corpを使って社内改善をしたい企業を含め、B Corpコミュニティ全体での底上げを目指していくところである。

そして新基準への移行だが、最初から100%新基準に準拠することを要求するのではなく、段階的に、再認証のタイミングに合わせて徐々に準拠していくような構想が検討されている。

B-Corp新基準準拠の方法
新基準への段階的対応方法を図示したもの、B Labリリースより

気になる詳細は続報を待つしかないが、定期的に更新することが約束されており、新基準での認証スタートは2026年とされているが、2025年中には、再認証のタイミングに合わせて認証済企業がいつ、どこまで対応が必要かについて順次アナウンスするとしている。

 

リリースの最後には「すべてのビジネスのための青写真」と題し、この認証の持つ可能性と野望について示されている。

B Corp認証はすべての企業に適しているわけではありませんが、すべての企業が社会に貢献できる可能性を秘めていると考えています。B Labの開発する基準は、すべての企業がそのインパクトを管理・測定するための青写真として機能し、本当に重要なことに集中できるように支援します。B Corpコミュニティがその動きを先導するとともに、B Labはより広範な企業ネットワークの取り組みに関わり、サポートできると考えています。B Labリリースより)