行列のできる認証B Corp、その裏で

行列のできる認証B Corp、その裏で

B Corp取得を決意し、やっと自己採点アセスメントであるBIAを終えて提出した後も、本部からの審査が開始されるまで一時期は1年以上(2022年9月時点では半年強)という長い待ち時間が発生している。それほど注目を浴びているB Corp認証。世界はコロナ禍にある中で、世界中の企業がこれまでと違ったやり方を模索し、これまでの経済システムからの脱却を目指す企業が増えている証拠である。2020年以降B Corp認証の申請数は6000社にのぼったそうだ。またこの間にBIAのアカウント新規作成件数は5万。B Corpの認証機関であるB Lab(B ラボ)本部も待ち時間を解消し、認証プロセスの信頼性を失わないための対策に追われている。

B Lab本部の認証・検証担当チームのGibson氏による2021年の振り返りからB Labの見解を紹介しよう。

B Corp取得企業の推移

2007年以降のB Corp取得企業の総数の変化は下図の通り。かなりの勢いで伸びていることがわかる。地域別にはイギリスで70%、ヨーロッパで37%、オーストラリア・ニュージーランドで20%の伸び率を記録している。

またB Corp認証申請数、つまりBIAの提出企業数は2020年3000社以上、2021年は3500社を超え、コロナ・パンデミック以降のB Corp申請企業は6000社にのぼる。2021年の申請増加率は地域別にヨーロッパが46%、イギリスが55%、台湾が44%だった。

B Corpムーブメントに参加したい企業が増加することが嬉しい一方で、プロセスを十分に理解しないまま認証に臨むことが多いのが現実であるという。必要な書類がなかったり、法的要件を満たしていなかったり、スコアを過大評価していたりするために、余計に検証や認証のための審査期間が長くなり、さらに他の企業の待ち時間を助長している。これから申請する企業も足を引っ張らないよう互いにしっかりと準備して臨みたいところである。

B Lab側の対策

待ち時間の解消のためにB Lab側もいくつかの対策を行っている。

パートナーシップ

2022年2月にeラーニングやESGサービスを提供するB Corp・Genashtim社とB Labが戦略的パートナーシップを締結、申請数の増加に対応し、B Labの検証能力増強を目指す。Genashtim社からは20名のフルタイム検証アナリストを派遣、B Corp認証申請企業の資格審査や法的要件の確認、BIA回答の検証、電話会議による確認などの業務を行う。アナリストは、中国語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語に堪能であり、アフリカ、アメリカ大陸、オーストラリア、アジア、欧州など世界中のあらゆる時間帯に対応できる。日本企業も今後申請した後にGenashtim社からのアナリストに出会うこともあるかもしれない。

B Lab本部メンバーの採用


もちろんB Lab本部自体のメンバーも増員している。2021年にB Labはオーストラリア、オランダ、イギリス、アメリカなどから、認証を担当するチームに30名を新規に採用。また、厳格な認証プロセスを維持しつつ、効率を向上させるべくテクノロジーを活用し、実務の見直しも継続的に行っている。

認証中企業の行動規範作成


非営利団体であるB Labもこのコロナ禍においてスタッフはリモートワークを強いられている。メンバーの中には快適でないホームオフィスからの作業や長引くパンデミックの不安、以前に増して複雑になった家庭との両立など、精神的な負担も多く、認証チームでは残念ながら離れることになってしまったメンバーもいるそうだ。さらにやや衝撃的な事実ではあるが、認証課程にある企業が、B Labの特に黒人、東アジア系、先住民、ラテン系、東南アジア系、太平洋諸島系のメンバーに対し態度が悪いということもあるそうだ。この問題はパンデミック以前から存在していたが、パンデミック中に悪化しており、B Labは認証プロセス中の企業向けの行動規範の作成に取り組んでいる。B Labスタッフ側の精神的な健康を維持することも認証プロセスをスムーズに進めるために必要なことであり、スタッフ人数のキャパシティだけでなく根本的な課題へもアプローチをしているのだ。

認証企業同士がより良い世界の実現に向けてコラボレーションをし、ムーブメントを起こすのがB Corp。ぜひ認証申請するその時から、互いを思いやり、高い基準を目指す気持ちを持って取り組みたいところだ。