B Corp認証取得の第一歩、アセスメントの回答を記入して提出するためのBIAツール。企業の形態や前段の質問の回答によってアセスメント項目が変わるので、まずhttps://app.bimpactassessment.net/からアカウントを取得しよう(2社目の場合は、ログイン後に出てくる画面の「+ADD A NEW COMPANY」から)。
BIAのアカウントは無料でいくつでも作れるし、社員と共有もできる。英語に慣れていればメモをしたり、将来のゴールを記入して後でリマインダーしてもらうような機能もあり、またSDGsゴール1つ1つに対して自社がどういう取り組みができているかを確認することのできる「SDG Action Manager」にも連携している。
会社の基礎情報入力
まずは会社名を入力、国名と都道府県、また直近の会計年度終了日を選択。第一期が終わっていない場合は、直近の会計年度終了日(未来も登録は可能)を選択する。
ビジネスを始めて間もない会社について、ベネフィットコーポレーションなどの法人形態が存在しているような国では「Pending B Corp」というステータスもあるが、日本では認められていないので、会社としての事業活動を開始して12か月以上経過していないとBIAを提出しても跳ね返されてしまう。
事業活動の開始日は必ずしも登記日や第一会計期のスタートではなく、1) 会社の所有者など含め少なくとも週35時間労働する「従業員」がいる状態か、2) サプライヤーかクライアント・顧客と実際に取引を開始した日のどちらかを満たす日となる。BIAは主に過去12か月のパフォーマンスを評価するものなので、事業活動の実態無しにその活動を示すことはできない。逆に登記日とクライアントと関係を持った日が違うのは覚えているがいつだったか思い出せない(が思い出せないくらい年数が経過している)という場合は、登記日を入力する(最新情報はB Corp認証機関であるB Lab(B ラボ)の解説を参照)。
とはいえ、アカウントを作ったり、アセスメント内容を見たり、回答を埋め始めるのはいつでもいい。創業時からB Corpのコンセプトを埋め込んでしまいたいという企業は迷わず登録しよう。
ちなみに国名でも先進国か、途上国かが判断され、アセスメント内容を決定するクライテリアに反映される。
業種の選択
ここでの選択によってアセスメントの質問群が変わることになる。まずは大きなセクターのくくりで、農畜産業、製造業、卸売/小売業、環境負荷の高いサービス業、環境負荷の低いサービス業のどれに当てはまるかを回答。主に環境・社会負荷の程度によりアセスメントする項目を変えているが、サービス業に関しては環境負荷が高いか低いかで、その下の業種の選択肢は変わらない。自社のバリューチェーンを勘案して選択する。
該当する業種がどのカテゴリーに属するかを知りたい場合はこちらのテーブルを活用し検索すると良い。
また複数の事業を営んでいる場合は、売上高に占める割合の大きいものを選択する。なお実際にBIAに回答する際も、売上高比率に応じて回答したり、大部分を占める事業に当てはまるもので、一貫性を以って(ある質問はある事業にあてはめ、別の質問は他方の事業にあてはめる、ということは避けて)回答する。
従業員数の選択
規模の大きくない会社にとっては従業員のカウントはややトリッキーであるが、この選択によってBIAの構造が変わるので非常に重要である。
基本的には固定給を受け取る週40時間以上労働の従業員をカウントし、選択肢は0人, 1-9人, 10-49人, 50-249人, 250-999人, 1000人以上 である。40時間というのは各国法定労働時間に拠るので、国によって例えば35時間でカウントということもありうる。また雇用形態には、正社員(フルタイム/時短)、契約社員、派遣社員、パートタイマー/アルバイト、業務委託、創業者自身等様々あるが、基本的には(残業含めた実態ではなく)契約の時間が判断基準になる。
以下はB Labの解説を元にできるかぎりの解釈を示したものだが、B Lab公式の日本独自向けに作られたガイドではないため、 カウントによって0か1人、9か10人という狭間になる場合はB Lab本部と直接確認されたい。
また、待ち時間が長いこともあり、あと数か月で区分けが変わる、ということもあるかもしれないが、BIA提出が数か月先となってしまう場合にも回答を始める時の「現状」で回答することになる。「現状」は、期間従業員などもカウントするため、基本的には前年度の従業員を(入替が多い場合、厳密には月数単位で)カウントする。
創業者しかいない、スタッフは皆業務委託だ、という0人の従業員の会社もB Corp認証取得可能だ。究極的には個人事業主も可能である。その場合は、BIAで評価される5つの分野「ガバナンス」「従業員」「コミュニティ」「環境」「顧客」のうち「従業員」セクションがすっぽり抜け、4分野での評価、「満点200点」というのも0人の場合は110点となる。合計点は下がるが、1問あたりの加点度合はやや大きくなり、評価のハードルが感覚的に高くなるかもしれないが、この部分についてはB Labも意見を求めているようだ (最新情報はB Labの解説を参照) 。
またコロナ時の状況変化については、かなり甚大な影響を及ぼしたことは認識しつつも、それもビジネス環境の一つ、その中で経営意思決定を行うというのが企業であり、それを反映したパフォーマンスを評価するというのがB Labの考えであるため、特別に何かを優遇するというものは基本的に無い。コロナ以前の状況で回答するのではなく、現状で回答することになっている。B Labにとっては未曾有の状況下でB Corpがどのように対応したかの情報蓄積ができ、企業がどんな行動を取るべきかの示唆を得ることができる。企業にとっても、例えば売上に打撃を受け厳しい環境下でも工夫や努力を続け、B Corpのような厳しい基準を保って経営を続けられることが真の意味で「サステイナビリティ」なのであろう。 3年に1度の再アセスメントにおいて残念ながらコロナのせいで80点を下回ってしまった場合には、B Lab側も改善策を共に考えてくれるなどの対応はあるようだ(最新情報はB Labの解説を参照) 。
最後に自分自身が、企業の創業者/従業員、非営利団体、学生、研究者、B Lab職員、報道関係者、その他の中から該当するものを選択し、「Get started」を押して完了だ。
プロジェクトメンバーと共有する
B Corp認証取得を1つのプロジェクトとして社内外含めて複数人で取り組むこともあるだろう。ツールにログインし、左側のメニューで設定を選択すると、他のメンバーを招待することができる。招待された側は、メールで送られてきたリンクをクリックし、名前とパスワードの設定のみで共有されたBIAの編集・閲覧が可能(特にどちらかの制限機能は無い)だ。
間違えた!変更したい!
セクターや従業員の人数などは後からでも変更ができる。ツールの「Dashboard」を選択し、出てくる画面中央あたりにある基本情報の枠内の「UPDATE TRACK」で変更可能だ。
また売上が約50億ドル規模を超える、子会社を複数持つグローバル企業などの場合は、こちらを参照の上一度Bラボと進め方の相談をする。子会社全てがそれぞれに取得するか(ダノンは各国順次取得)、フランチャイズ以外の複数の海外子会社のBIA回答の平均で判断するか(Bodyshop本体はB Corpだが日本法人はB Corpではない)、またBIA以外にも必要な要件がある。
BIAに関してのFAQは、上記にも何度か参照先を示しているが、こちらの公式サイトを参照できる。質問や情報変更などのリクエストも、メール以外にこのプラットフォームで「チケット」を作成すると対応してもらえる。B Lab絶賛多忙につき質問によっては回答に日数がかかるが、必ず回答してくれるので待ってみよう。解説については刻々と変化する状況を踏まえて適宜更新されるので、気になる点は最新情報を参照されたい。