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GapのB Corpブランド、成長牽引へ

GapのB Corpブランド、成長牽引へ

10月に発表されたGap株式会社の3か年経営計画で、Gapとバナナ・リパブリックの店舗を閉鎖する一方で、B Corp認証を取得している「アスレタ(Athleta)」は売上を2倍にし、Gap全体の利益率を引き上げる役を担うようだ(Forbes参照)。大企業のGap傘下にあるこのアスレタ社がB Corp認証取得とその後のブランディングをどのように進めたのか、インタビュー記事を紹介しよう。

アスレタ社は「Power of She」と題し、女性のエンパワーメントをテーマにヨガやランニングをはじめとするスポーツウェアなどを展開するブランドだ。1998年にカルフォルニア州のペタルーマで誕生し、10年後にGapブランドの仲間入りをした。今はGap全体の売上高の6%でしかないが、その高い利益率と成長の期待からGapとして注力していくブランドであり、今後3年間でOLD NAVYと併せて売上の7割を目指す。

アスレタ
Gapの発表資料より

アスレタのインスタを見ると、いわゆる体型の美しいモデルではなく、身近にいそうなエクササイズを楽しむ女性をモデルとしており、他にも女性アスリートやあらゆる方面で活躍する女の子をフィーチャーしている。インスピレーション、モチベーション、コネクションをコアバリューに置き、女性・女子の無限の可能性を引き出すことをミッションとしている。

画像2
アスレタのインスタグラム

(以下インタビュー記事)

B Corpを取得する意義

アスレタ社のCFO(当時)のクリス・サムウェイ氏は、アスレタがトリプルボトムラインアプローチ(経済的・環境的・社会的の3つの側面から企業活動を評価する)を採用すること、企業が社会にポジティブな影響を与えることへの消費者の関心の高まりに応えること、 Gapという大きな会社の支援によってそうした活動をすることにベネフィットを感じている、と話す。
「財務の観点から見ても、社会の関心に合わせたビジネスにおけるROIは非常にいいんです。次世代の消費者たちは何かのためにやっているブランドをもっともっと気にするようになります。ひとと地球を会社の利益と同じ位置づけに置くような企業に共感するのです。」

Gap本体のCEO(当時)アート・ペック氏は米テレビCNBCのインタビューでこう話した。
B Corpを取得するというのは、価値観の問題なんです。価値観に共感されればそのブランドと顧客との関係も深まります。ミレニアル世代なのか70歳のおばあちゃんなのかどうかは関係ありません。消費者はそのブランドの価値観に共感できるかどうかという目線で見ます。すごく説得力のある現象ですよね。
アスレタ社はB Corpへのコミットメントを確実なものにするために、定款を変更し、正式にベネフィットコーポレーションという企業形態になりました。これによりGap株式会社はB Corp認証のブランドを持つ小売大企業の1つになったのです。我々はアスレタをGapのケーススタディーとして学びを生かそうとしています。Gapが社会、そして環境へ良いインパクトを与えるためのオポチュニティとしてアスレタをベンチマークし、そのロードマップを参照していきたいと考えています。」

壮大なプロセスを推進する秘訣

ベネフィットコーポレーションになったことは、米証券取引委員会(SEC)にも書面で公表されている。だが、そんな壮大で、テクニカルで、専門用語だらけの改訂をして、ショップ含め会社の従業員全員、さらには顧客にも認知してもらうという大仕事を、どうやってのけたのだろうか。

アスレタ社はそれ以前から「パーパス・ドリブンな会社」(企業の存在意義を問い、それを中心にビジネスを展開していく)になるためにはどうしたらいいかを模索していた。サムウェイ氏(当時CFO)はB Corpであるワービー・パーカー やオールバーズ、B Labの人たちと会った。
「B Corpのことについて学んでいくうちに、今こそアスレタがムーブメントに参加してソーシャルインパクトや環境サステイナビリティにコミットする時だと強く思うようになりました。ベネフィット・コーポレーションという企業形態をとるための法的要件というのは、金銭的な稼ぎとパーパス・ドリブンなアクションとをバランスさせて、広義の意味でステークホルダーたちに便益を提供することなのであると他のB Corpから学びました。」

サムウェイ氏はアスレタ社のストラテジー&マーケティング・エフェクティブ部のエミリー・アルブリトン氏にBIA含むB corp認証に必要な書類作成を託した。
「1年丸々費やしたプロセスでしたが、アセスメントを活用してこれまで私たちのチームが取り組んできた偉業のすべてを測りました。アセスメントは自社をより包括的に捉え、そして社会や環境に対して最大限のインパクトを与えるために、どこにエネルギーとリソースを優先的に投じるかを考えるのに役立ちました。」

Gap株式会社の一部として、戦略的観点からB Corpに転換するためのサポートを確保する必要があった。さらに、サプライチェーンでの取り組みや平等な給与体系などBIAの中でGap本体と共有できる制度は統合すべく、ここにもサポートが必要であった。アルブリトン氏は、アスレタのような大企業、そしてGapのいち子会社として、認証を取得するためのプロセスに経営層をサポーターとして巻き込むことの重要性を強調する。実際にサムウェイ氏含むチームは5名の経営陣のサポートを得た。またプロセスにおいては、社内のサステイナビリティ、オペレーション、人事、企業不動産管理などの部署、そしてもちろん法務と取締役会など、総勢35人ほどとつながっていた。

「他のあらゆる戦略決定と同じように、こういう時は結局その企業の価値観に帰結するんですよね。認証プロセス通して私たちはGapの経営層から多大なるサポートを得ることができました。Gapは、創業者のドリス・フィッシャーとドン・フィッシャーにより、『コミュニティと環境に対する責任』というコアバリューを礎に、将来世代のリーダーたちに『洋服を売る以上のことをせよ』と託した会社です。アスレタがそのGapの一員であることは幸運なことだと思います。」

社内での連携を深める取り組みについてサムウェイ氏はこう話す。
「B Corpとは何か、それは我々の成功指標の測り方をどう変えるか、そしてどうしてそれが重要なのか、ということを社内中に知ってもらうために説明会を行いました。B Labによって開発されたフレームワークは、我が社の戦略の方向性と合致しており、社会的・環境的インパクトが測りやすくなるだけでなく、十分配慮された投資とオポチュニティに対するアクションを実行するためのロードマップを示してくれるのだということを強調しました。」

取得後はコミュニケーションに集中、団結を求める

認証取得後の社内コミュニケーションに関してはアルブリトン氏がこう答える。
「認証が下りたら、今度はそれを広く告知することに集中しました。無事認証を受けたことを、アスレタの全部門が集まる月次会議で報告しました。まず従業員に一番に知らせることが重要だと考えたからです。従業員たちの協力によって認証が取れたのですし、従業員が会社の最大の代弁者だからです。私たちはB Corpを目指した目的と、今後数年間でアスレタが次のゴールに向かう際にどのようにB Corpを活用するのかということを説明しました。そしてお祝いしました!さらに社外アナウンスメント前に、四半期に一度のGapの全社会議でも認証取得を発表したのです。」

アスレタがより良い社会のために運営していけるよう尽力してくれた従業員たちをまず称賛すること、そして今後も会社がポジティブな影響を与え続けられるようなコミットを強調するのが目標だった。アスレタの経営層は社員一人一人が会社の価値観やB Corpであることの重要性を共有し、全ての行動において会社のミッションの推進者となることを期待している。

店舗責任部長のマリー・キャサリンは、B Corp取得後の店舗とのコミュニケーションについてこう話す。
「150近くの店舗で働く従業員を巻き込むことも重要でした。 休憩室にポスターを貼り、リーダ向け資料にも印刷しました。取得の公表後最初の1週間は、議論を深めワクワクを共有しました。」

従業員のエンゲージメントは公表した週だけで終わらなかった。アルブリトン氏は、
「B Corp・ガバナンス・コミッティを設置し、次のBIA(3年おきの更新)での点数向上を目指して活動しています。コミッティは従業員への教育と、理解を深めエンゲージメントを高めるためにツールなどの提供をしています。私たちは、会社の意思決定に役立つガイドとしてBIAを使うつもりです。会社の戦略とアセスメントで問われている内容を一致させれば、アセスメントに沿ってリソースシフトの優先順位を決めることもできます。すべての従業員の日々の意思決定の中で、ひと・地球・利益がフィルターになってほしいと思います。」と話す。

アスレタの店舗の従業員はB Corpについてどう思っているのだろうか。

ある従業員は「私にとってB Corpでいるということは、企業として社会に対して与えられるインパクトを私たち自身が理解しているということです。私はこの志を共にする会社たちの一員であることを誇りに思います。私たちはビジネスを成功させるためにここにいるのだ、と思えるからです。ただその成功というのは金銭的なものではなく、大事な地球のために正しいことをやっているかどうかで測るものです。」と話す。

B Corpのことを顧客にうまく伝える

「B Corpの認証を受けたことは非常に光栄なことなのですが、 それを人に伝えるのはちょっと難しいです。 我々はお客様にB Corp認証とは何を意味するのか、そしてなぜアスレタがそれを取得できたのかを理解してもらいたかったんです。私たちのゴールは、B Corpのストーリを少しでも理解してもらうために、会社のミッションや経営、商品戦略、従業員文化の具体例を示すことでした。」
こう話すのは、ブランド・マーケティングのシニア・マネージャー、ステファニー・ツァイだ。
「社会的に責任ある企業として存在してきた私たちのストーリーに積み重ねる形で認証を取得しました。顧客の理解が進めば我々の会社が”talk the talk(言うだけで何もしない)”ではなく”walk the walk(示した通りに実行する)”会社であると認識してもらえます。我々にとってもいろんなことが明確に示せるようになるのです。」

しかし、企業はB Corp に取り巻くすべてのピース(環境、顧客、インクルージョン、コミュニティー、ガバナンス、etc.)をどうくみ取って、理解しやすく、わくわくできて、行動できるストーリーにできるのだろうか。

ツァイによると、「私たちにとって最大のチャレンジはB Corpの価値のうち何に注力するかを決めることでした。私たちはサステイナブル部門から店舗管理部門、人事部門に至るまで部署横断した会議を開き、3つの柱を決めることにしました。」

ソーシャル・メディアのシニア・マネージャー、エイミー・プラブナーが続ける。
「柱はサステイナビリティ、コミュニティ、女性と女子のエンパワメントに着地しました。これらは既に私たちのブランドの柱だったので納得がいくものでした。何を柱にするかを決めれば、それぞれの柱における数字や事実を入れ込んでいくのは簡単でした。そしてそれは我々が消化できる方法で我々のストーリーを実現させるのに役立ちました。
3つの柱はソーシャルメディアやウェブサイト、店舗やカタログ等様々なプラットフォームにおいて展開されました。ソーシャルメディアは視覚的に我々のストーリーを伝えるのによいのですが、しっかり内容が伝わるようにしました。インスタグラムのストーリーで顧客のエンゲージメントを維持し、B Corpとしてどう活動するのか視覚的な例を提供しました。もっと情報が見たい場合はサイトに誘導することも可能でした。」

会社のウェブサイトやカタログなどはこの3つの柱(現在は5つ)にまつわるゴールを反映したものに変更し、B CorpのロゴとB Corpのウェブサイトへのリンクを加えて顧客が参照できるようにした。
ショップの来店客に向けては、アスレタが認証を取ったことを知らせるとともにB Corpのムーブメントは一体どういうものなのかをあえて店員に聞いてもらえるように、店の正面ガラスにB Corpのロゴと宣言を貼った。
「B Corpのマークがインパクトありますし、お客様が「これ何かしら?」と思うようなフロント・ウィンドウにしました。ショップの店員はお客様に、B Corpの仲間入りしたことがどんなに素晴らしいことかを話しています。フィッティングルームにも我々のサステイナブル・ゴールのことが書いてあって、お客様が読んでいるところに話しかけたりして、もっと情報共有したりしています。」

取得直後の正面ガラス

アスリータ

今日、私たちは誇りに思っています。
今日、公式にアスレタはB Corpになりました。
「すごい!でもB Corpって何?」
B Corpとは、ひとと地球を会社の利益と同じ位置づけにしている会社です。この認証をとれて、晴れやかな気持ちです。
でも頑張らなくちゃとも思います。
もっとできる、もっとやらなきゃいけないからです。
だから、今日はお祝い。明日からまた仕事に励みます。

認証取得のその先へ

「我々はただのチェックボックスで終わらせたくないんです。戦略やロードマップとしてだけでなく、我々の活動を向上させるためのガイドとしてBIAを活用したいんです。ただ点を稼ぐためのチェックリストではなく、より良い世の中を推進するための手段としてのビジネスのやり方を見出せるというのはB Corpの醍醐味だと思うんです。
私はB Corpのコミュニティが、活動を共にし、ベストプラクティスを共有しようとしていることを知ってとても感銘しました。B Corpの会社たちは本当に大事なことに取り組み、世界をより良いものにしようとがんばっているんです。」とアルブリトン氏は語る。

サムウェイ氏は、B Corp認証取得は、アスレタ社がより良い世の中を推進する存在になる旅の始まりに過ぎない、と言う。
「我々は、年を追うごとにさらに良いインパクトを与えられるよう飽くなき追及を続けるパタゴニアやダノンのような会社に触発された。大事なのは我々がどこに向かって活動するかを議論することだ。そして他の企業などもこの旅に参加してくれることを望んでいる。」