【BIA対策】秘密の扉、IBM

【BIA対策】秘密の扉、IBM

B Corp取得の第一歩、自己採点アセスメントであるB Impact Assessment(BIA)の中に、社会や環境に対し特筆すべき良い影響を与えている取り組み(ビジネスモデル)を特定し、高く評価する、Impact Business Model(IBM)という項目が含まれている。通常BIAは1問あたり0.1点から多くても3点程度の配点だが、これらの項目では10~30点程度を一気に獲得できる可能性がある。最初からその質問は提示されていないが、各分野(ガバナンス・従業員・コミュニティ・環境・顧客)の冒頭の質問の回答次第で現れる、いわば「秘密の扉」なのである。世界共通で平等に高い評価が与えられるようにある程度の型は決まっているが、5つの分野のそれぞれに設定されている。

各分野冒頭の質問により、IBMに該当する回答をした場合、自動的にそのページ下部に「ーImpact Business Model」とグレーで記された質問群が登場し、大体がそのビジネスモデルの内容、それによって生み出される売上高(全売上高の何割の事業がそれに該当するかによって獲得点数が変化)、それが与える影響の測定状況などを問われる。

BIA-IBM表示-B-Corp-取得
BIA画面より

高得点が期待できる一方で、審査は厳しく、本部の求めているようなビジネスモデルに該当しなかったり、証拠資料が足りない場合はその分一気に減点となるためリスクも大きい。またB Corpの認証機関であるB Lab(B ラボ)では、1つの企業で多くて2つ程度のIBMを獲得する想定をしており、多く選択してすべてが認められる可能性は低い。IBMで失点しても80点を超えられるように準備することが安心である。

なおIBM以外の通常の質問は「オペレーション」に関する質問であり、それらの得点はBIAレポート上の「OPERATIONS SCORE」、IBMでの得点は「IBM SCORE」、その企業では該当しない項目について「N/A」で回答した場合(「生活賃金」に関する質問は日本の場合は自動的に「N/A」)は、「N/A SCORE」に表示される。

BIA-得点構成-B-Corp
BIA画面より

BIAで評価されるビジネスモデルの全体像は下記の通りだ。

B-Corp-認証取得に向けたBIAで問われるIBM-インパクトビジネスモデル-の全体像

では各分野詳しく見ていこう。

ガバナンス

この分野では「秘密の扉」ではなく、初めから設定されている。全てのステークホルダーを考慮し、自社のミッションを推進することを確実なものとなる企業形態を選択しているかどうかを問われる。この究極の形が「ベネフィットコーポレーション」になること(1番下の選択肢)で、10点の得点が得られる。残念ながら日本の会社制度においてこれを選択することはできないが、最終的にはどの企業も、自国にベネフィットコーポレーションと同等の制度ができた暁には速やかにそれに準ずる手続きを行うことを誓約した上でB Corp認証を取得することになっており、それを示した選択肢が1番上に該当する。つまり、日本企業は自動的にどの企業もガバナンス分野のIBMで2.5点獲得することになる。

BIA-IBM-ガバナンス-B-Corp
BIA画面より

なお選択肢の2番目は協同組合の場合に該当、3番目はベネフィットコーポレーションではない他企業などが株主/所有しているが、会社自体はベネフィットコーポレーションである場合に該当する。

従業員

ここでは従業員による会社の所有か、慢性的な失業状態にある人に対しての職業機会提供で評価される。従業員による会社の所有は40%以上である場合に認められ、ステークホルダーの一員である従業員が経営への意思決定に参画できるかどうかがポイントである。

従業員所有のB Corp企業は欧米に多数あるが、一例としては2019年末にキリンがLion Little World Beverages社を通じて買収するまで100%従業員所有であった、アメリカ発のベルギークラフトビール・ニューベルジャン社。創業1994年、従業員所有になったのは2012年だが、従業員に対する透明性と参加型経営は創業以来続くものであったそうだ。

従業員-分野-での-IBM-インパクト-ビジネス-モデル-B-Corp-認証-取得
B Lab発行のIBMリストより

コミュニティ

ここでは主に経済活性化や貧困世帯へのアプローチが評価される。

コミュニティ-分野-での-IBM-インパクト-ビジネス-モデル-B-Corp-認証-取得
B Lab発行のIBMリストより

環境

ここはイメージしやすい分野と思われるが、自然環境の保護や保全に関する項目で評価され、B Corpを取得した日本企業でこの分野でIBM得点を獲得している企業もいくつかある。

環境-分野-での-IBM-インパクト-ビジネス-モデル-B-Corp-認証-取得
B Lab発行のIBMリストより

顧客

主に過小評価グループ、いわゆるマイノリティ層に対するベーシックニーズを満たすような商品・サービスの提供の評価に加え、アート・メディア・文化保護でも評価される。

顧客-分野-での-IBM-インパクト-ビジネス-モデルの紹介-B-Corp-認証-取得
B Lab発行のIBMリストより