地球でビジネスをするための費用を払う -1% for the Planet-

地球でビジネスをするための費用を払う -1% for the Planet-

パタゴニア創業者らの始めた「1% for the Planet」という取り組み。B Corp取得企業の多くもこの1% for the Planetに加盟しており、こうした確実なコミットメントへの参加はアセスメントでの加点にもなる。参加企業は売上の1%を、登録してある非営利団体に「寄付」をする、というのが1% for the Planetのオーソドックスな説明であろう。

今年4月にパタゴニア創業者のシュイナードが1% for the Planetのコミュニティにメッセージを寄せている。ちょうどコロナが本格的にパンデミックと認識され世界が混乱している時だ。経済への打撃も容易に予測できる、そんな苦しい中でも1%を提供するという選択は正しいことである、と述べている。そしてこの手紙の重要なポイントはここであろう。

「この1%はこの地球でビジネスをするための費用だ。この活動はフィランソロピーではない。この地球に生きていくために絶対的に必要なものなのである。そして何もしないことの裏返しなのである。」

ただの「寄付」ではない。ただの慈善活動でもない。我々のビジネスを行ううえでどうしてもかけてしまった環境負荷を軽減・ダメージ復元するためのコストであり、実際にそれをしてくれる非営利団体にそのお金を託すというわけだ。
技術的な革命が起き、大量消費の時代が来て、安価に様々なものが手に入れられるようになった。しかしそこに環境負荷のコストは入っているのだろうか。例えば1970年代の日本において問題となった公害対策などは企業のコスト、つまりは消費者の支払う価格に含まれているかもしれない。しかしここまで深刻となった気候変動を中心とした環境ダメージを見るに、我々はそれを修復するための費用を満額払ってこなかったのかもしれない。

事実、60か国3万人に調査した結果、消費者の66%(ミレニアル世代については73%)は、環境や社会に対して良い活動を行っている企業の商品やサービスをもっと高い値段で購入しても良いと思っている。環境負荷であれ、作り手の労力・技術であれ、企業は正しく評価しそれに見合ったコストを設定して販売し、消費者はその値段で購入する責任があるのだ。

つまり、この取り組みにおける1%の拠出は、ビジネスが成功して儲かったのでかわいそうな人たち・お金が必要な人たちに分け前を与えます、ではなく、地球でビジネスをするにあたり払うべきコストなのである。もちろんビジネスモデルそのものが環境負荷ゼロになるよう設計している企業も存在するかもしれないが、全てを完璧に自力で「ゼロ」にするのはほとんどの組織で難しいであろう。きちんと認定の受けた専門家たち託して環境保全をお願いするスキーム、それが1% for the Planetなのである。

さて、そんな1% for the Planetの運営団体は、いくつかの記事も執筆している。その中から中小企業などスモールビジネスにとっての「CSR」についての記事も紹介する。「CSR」と聞くと少々オワコンなイメージもある。「今はSDGsでしょう」「いや、SDGsと響きだけ良くて何もしていないでしょう、CSV(Creating Social Value)だ」など議論は尽きないが、1% for the Planetは上記のシュイナードの思いからすると、環境へのダメージに対する復元の責任としてあえて「CSR」という言葉をこの記事で使っているのかもしれない。しかしそれは日本企業がこれまでやってきた「CSR」とも少し違う、いわばGLOBISのコンサルタントが述べているような、中庸的な考えかもしれない。

(以下、1% for the Planetの記事)

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スモールビジネスにとってのCSR

スモールビジネスのオーナーにとってみれば、その人は誰よりも経営のことがわかるし、なぜその事業を起こしたのか、どこへ向かうのか、何のために存在するのかを知っている。しかし、多くのスモールビジネスは、そういう会社の価値観を寄付を通じて示すという絶好の機会を逃している。そういうのには余裕がないと考えているからだ。しかしそれは真実ではない。

スモールビジネスは金銭的寄付、物資またはサービス提供、従業員の無償ボランティアといった形で「寄付」ができる。企業の形態や財務状況に応じてこれらの中から適切なものを選べばいいのだ。もっといいことに、スモールビジネスなら、非営利団体とパートナーシップを組むことによって、「Day1」からブランドのストーリー沿った活動を示すことができるのだ。

Day1から企業価値を示していく

スモールビジネスとして非営利団体としっかりとした関係を築くということは、ブランドストーリーを構築する初期の段階でそれが織り込まれていくということだ。つまりCSRの良いところを即刈り取れるのだ。具体的に挙げると、

競合を一歩突き放す:戦略的に非営利団体とパートナーシップを組むことはブランドストーリーの確立に役立ち、競合との差別化ができる。

顧客の知覚価値を上げる:(先述の調査結果参照)

新規顧客獲得:非営利団体とのイベント、SNS、広告、外装への記載などを通じたコラボ によって、ビジネス/ブランドの価値観に共感してくれる新規顧客とつながることができる。

優秀な人材確保: 会社の価値観を体現していることにより、それに共感する且つ会社にフィットする人材を惹きつけ、獲得することができる。

つまり、CSRは「中小企業にも取り組めるもの」ではなく「ビジネスにとっていいこと」づくしなのである。初めは小さな活動だったとしても、ビジネスが成長するにつれ、その活動も大きくなる。一番大切なのはまず一歩を踏み出すこと。ではどこから始めればよいのだろうか。

正しい寄付戦略を見つける

非営利団体と組むときは、サステイナブルで双方に利益が生じるような戦略を立てることが大事である。ということは、会社の価値観に沿っていて、現実的でインパクトのある活動ができるような非営利団体パートナーを見つけるということだ。さらに、そのパートナーが第三者機関によって評価されていれば、顧客や従業員に対して真の活動ができていると示すことができる。ありがたいことに1% for the Planetは中小企業に対して、その団体の価値やゴールを元にマッチングもしている。こうしたパートナーシップはブランドストーリーを構築し、永続的な変化を起こすことができる。

1% for the Planetなら金銭、ボランティア、物資的寄付などから一番その会社にあった形で、そして会社・非営利団体が共に社会に対して変革を起こせるような戦略を立てられる。そしてたったの1%のコミットなので、会社の成長と共にその規模を大きくしていけばいいのだ。

ボディケア商品を扱うAll Good創業者兼CEOのキャロライン・デュエルはこう話す。
「1% for the Planetの一員になるというのは我々のルーツにあります。利益を還元したいという思いに対して責任をもってアクションを起こす、ということが続けられるのです。我々の声で、そして1% for the Planetの会員であるということを生かして、環境問題の重要性について認知を上げる活動ができることを誇りに思っています。」

1%寄付し、それと共に成長する

企業からの寄付に小さすぎるものなどない。スモールビジネスにとってのCSRとは、価値観を定義し、経営者自ら、そして従業員や顧客、世界に向けてに示すという、会社を成長させるうえで大事なことなのだ。

1% for the Planet会員になれば、認定された寄付、大きな影響を与えられる活動、ブランド構築が即できる。一歩先を行く企業と共に、共同でマーケティングやパートナー活動、イベントなどができる機会もあるかもしれない。

(1% for the Planet説明へと続く)

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読んでみるとあまりに当たり前のことばかりだが、推進していくための自信にはなるだろうか。

慈善活動、CSR、CSV、ESG、SDGs。解釈はこの際どう捉えても良い。肝心なのは行動すること。そして経済的余裕のないコロナ禍においてのあえてのメッセージである。一度コミットを決めてしまえばあとはまわっていくので、せっかく確立されたシステム・コミュニティを生かして前に進めていくのも手だ。

ゆくゆくは「世の中にとっていい会社」になるためになんかする、と考えているのなら、行動するのは今かもしれない。今年が創業の年で利益が出なかったとしても、コロナで苦しく従業員まで解雇したのにそんな場合じゃないと思っても、ブランド構築や優秀な人材の確保など、会社の利益の源泉となるものへの投資にコミットすることに、従業員も顧客も株主・出資者も納得してくれるかもしれない。