B Corp認証を取得するためのアセスメント・BIAの「コミュニティ」分野は、職場のダイバーシティから地域社会への貢献、サプライヤーへの対応と幅広い。環境や社会への影響を重要視したいわゆるソーシャル・ビジネスにはアピールしやすい質問もあるかもしれない。初めて取り組んでみる場合のきっかけになりそうな情報ソースを探してみよう。
Creating and Managing Inclusive Work Environments
インクルーシブな職場環境の醸成・管理
Which of the following practices does your company have in place around diversity, equity, and inclusion?
ダイバーシティ・公平・インクルージョンに関して、取り組んでいるものがあるか
□ すべての求人広告に、ダイバーシティ・公平・インクルージョンへのコミットメントを記載
□ 応募書類や履歴書を、名前や特定できる特徴を外し、匿名またはブラインドで審査
□ 自社の求人内容の文言や要件の分析を行い、それらがインクルーシブで公平なものであることを確認
□ 全従業員を対象に、ダイバーシティ・公平・インクルージョンに関する研修を実施
□ 具体的で測定可能なダイバーシティ目標を設定
□ 性別・人種・民族・その他の人口統計学的要因による給与の公平性分析を行い、必要に応じ是正措置を講じている
ガバナンス編でも触れたように、企業のダイバーシティに関する関心は世界で非常に高い。ほとんどの欧米企業の求人広告にダイバーシティ・公平・インクルージョンに関する文言が書かれている。日本ではあまり見かけないが、外資企業を中心に参考になる文言があるだろう。ほんの数行だが、ここに書くということはコミットすることを意味する。有言実行の機会と捉えて文言を考えてみてもいいかもしれない。
ダイバーシティに関するトレーニングも自前でいくらでも作成できる。ガバナンス編で紹介したように、Google ClassroomやYoutubeなどのツールが便利だ。「ダイバーシティ・公平・インクルージョン」と言ってもかなり範囲が広いため、自社が特に取り組みたい領域、自社の活動に関連する領域、社員に知っておいて欲しい項目など自社としてのテーマを定め教材を作成するのが良いだろう。
給与の公平性分析に関して企業に対して報告を法律で義務付けている国もある。イギリスでは企業単位で男女別の給与差が一般市民も見られるようになっている。
Corporate Citizenship Program
企業市民活動
How does your company take part in civic engagement?
どのような社会貢献活動をしているか
□ 金銭的もしくは物的寄付 (政治献金を除く)
□ 地域投資
□ コミュニティサービスやプロボノ
□ 社会的&環境ポリシーやパフォーマンス向上の採用を提唱(政策提言)
□ 地域のチャリティー機関とのパートナーシップ
□ 十分にサービス(医療など)を受けられない人たちへの商品やサービスの割引提供
□ コミュニティ活動のための会社施設開放
□ 自社の株やオーナーシップの非営利団体への付与
□ その他
B Corpを目指す企業なら1つや2つは実践しているものがあるかもしれない。それぞれ活動を新しく始めるにはなかなかエネルギーも必要なことだが、実はこの設問自体は配点がさほど高くなかったりもする。ただこの回答の結果によって追加質問が出て、項目によっては高い得点もあるので、継続的に実施していて証明が可能な活動を選択する。
4つ目の提唱(Advocacy)を選択すると、具体的にどんな政策提言をしているかという追加質問につながる。一般企業には一見ハードルが高そうだが、B Corpの「ムーブメントを起こす」という使命感や、「ベネフィット・コーポレーション法」をロビー活動によって州に制定させた背景を考えると、問われるのは当然であろう。キリンは報告書(p84)の中で自社の政策提言活動として様々なイニシアティブを列挙している。これは政策提言活動と言える・言えないという明確な基準があるわけではないが、アンテナを張って法や行政の動きを変えられるチャンスがあれば積極的に参加してみてはいかがだろうか。
Supplier Code of Conduct
サプライヤー行動規範
Is there a formal written Supplier Code of Conduct policy that specifically holds your company’s suppliers accountable for social and environmental performance?
サプライヤーに対し、社会的・環境的パフォーマンスへの責任を明確に定めた、正式な書面によるサプライヤー行動規範があるか
BIAにおけるサプライヤーは一般的に自社でモノを販売する際の原料や部品に留まらず、ウェブデザイナーやサービスプロバイダー、会計士、アウトソーシング先の会社、業務委託者のうち週20時間以下の勤務者などその範囲は幅広い(詳細はこちらを参照)。漏れなく洗い出すのは大変だが、家賃や光熱費を除いた費用がどこに流れているか確認してみよう。他の設問で「主要なサプライヤーの中で」と問われている場合は、8割(従業員10人未満の場合はトップ5)のサプライヤーで考える。
さてそのサプライヤー遵守してほしい項目をまとめた「Code of Conduct (行動規範)」について、B Corpの認証機関であるB Lab(B ラボ)がベストプラクティスガイドを発行しているが、多くの企業は①国連グローバルコンパクト10の原則、②国連人権宣言、➂ILO国際労働基準に内容を即している。大企業はその内容を自社ウェブサイトの中で公開しているので、それらを参考にすることもできるだろう。法的根拠があるわけではないが、相手に求めるということは自社も徹底的に遵守している必要がある。自戒も込めて作成してもいいかもしれない。
※好事例・ベストプラクティスを紹介したり、各企業を評価するために掲載しているものではありません。
※上記の情報は2021年10月時点のもので、各種法律専門家・資格保持者の見解でないことにご留意ください。
またBIAの日本語訳はB Lab公式のものではありませんが、B Labが発信している情報を元に解釈し、アプローチの例を示しているものです。
各社のBIA提出において得点を保証し、減点を起因とする企業の経済・社会的損失に責任を負うものではありません。