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大企業はB Corpになれるのか

大企業はB Corpになれるのか

B Corpの説明をいくつか見た人の中には、「B Corp認証って、そんなに権威あるものなのか?」と疑問に思った人もいるだろう。

B Corp取得企業は世界で3700社を超えるとはといえ、取得企業は、パタゴニア、ベン&ジェリーズ、オールバーズ、ダノン…あとは知らない名前ばかり。アメリカをはじめとした外国企業で日本になじみがないというのもあるが、実際に中小企業・家族経営の企業による取得が多い。

B Corpのコンセプトには共感できても、「これからはステークホルダー第一で経営します」と株主の前で宣言するのは、「ステークホルダー」が株主を含んでいても、なかなか大企業にとってハードルが高いのも事実だろう。B Corpの基準に合わせるために、社内規定などを変え、社内の合意形成を得るのはなかなか大変な作業で、中小企業に比べて舵切りがスムーズに行かないこともあるだろう。
しかし、世界を変えるには、やはり規模は無視できないし、そうした大企業も何らかの形で活動にコミットできるはず。そこで、2020年秋に、B Corpの認証を行うB Lab(Bラボ)は「B ムーブメント・ビルダー」を立ち上げた。

この取り組みの対象となる企業は10億ドル(約1000億円)以上の売上を持つ大企業・多国籍企業で、メンター企業やB Corp認証企業のコミュニティの知見を活かしながら、B Corpの概念を体現していく「B ムーブメント・ビルダー」となって行動・活動するというものだ。

B ムーブメントに参画する企業は、まず下記のことを行う。

●CEOが「B Corp 相互依存宣言」に署名する (※B Corpのコミュニティ内で情報共有など協力し合ってよりよい世界を目指す)
●B ムーブメントの活動に確実なコミットをする
●Bインパクト・アセスメント(BIA)を使って、自社が社会的・環境的に与える影響度を測る
●マテリアリティ・アセスメント(※サステナビリティに関する評価と重要課題の特定をするもの)を行い公表する
●アニュアル・インパクトレポートを発行する
●SDGsの中から3つ以上の目標で、ゴールを設定し進捗状況を示す



そして、それら企業たち全体で取り組むのが、

●B ムーブメントの基本方針に公式ににコミット
●SDGs達成に向けて他社やステークホルダーとコラボする
●キーとなるステークホルダーや政策立案者を巻き込みながら、株主中心の資本主義から、ステークホルダー主導のガバナンスモデルへと移行させていく

B ムーブメントの基本方針とは、3つで構成されている。

B ムーブメント・ビルダーのウェブサイトより

真の信頼性
総合的で透明性のある査定に裏打ちされた、信頼でき、具体的で、包括的なアクション

広がりのあるコラボレーション
同志から学んだりパートナーシップを通じて共同でインパクトを生み出す、相互に支えあうコミュニティ

インパクトに富むトランスフォーメーション
全てのステークホルダーに共有価値を生み出すビジネスへと変革する、という革新的な目標に献身する真のリーダー


B ムーブメントの説明にはauthentic(真の)、credible(信頼できる)という言葉と、collaboration(コラボレーション)、collective action(共同行為)という言葉が散見される。口先でなく実際にホントにやるのだ、「いい会社でありたい」を「いい会社としてこれをやっている」とアクションに落とし込めるようにしていこう、という意志を感じる。そしてそれをB Corp認証企業から成るコミュニティの知見を活かして実現しようということなのである。

強いコミットを求められる一方、B Corpに賛同したいと考えている企業にとっても受け入れやすい仕組みになっており、必ずしもB Corpの認定を受けていない企業でも参画することができる。厳しい認定基準を何年もかけてクリアしていくより、まず何かの目標にコミットして、どんどん広げていくやり方によって、大企業も最終的には認証が取れたり、それに近しいほどの実績により世の中に認めてもらい、企業活動がしやすくなるであろう。

その活動を先人切ってひっぱっていくのが、フランス発・野菜加工会社ボンデュエール、ブラジルの鉄鋼メーカーゲルダウ、スイス拠点の世界最大香料メーカーであるジボダン、ブラジル最大の小売業であるマガジン・ルイザ(マガル)である。これらの企業は既にB Corp認証を取得しているが、まずはお手本として、というところであろうか。これら4つの企業を足し合わせると、600億ドル(約6兆円超)の売上、25万人の従業員に値する。
そしてその「メンター」としてダノンと、ボディショップを傘下に置くブラジルの化粧品メーカーナチュラが就く。

なぜこのようなイニシアティブを立ち上げたのか、B Lab創設者カッソイ氏らにインタビューした記事があるので、紹介しよう。この記事は、B CorpであるInspiring Capitalの創業者兼CEOでありライターのデビボイス氏が、カッソイ氏と、B ムーブメント・ビルダーのプログラム・マネージャーを務めるメンディサバル氏にインタビューしたものだ。

(以下記事より)

デビボイス氏: B Labのコミュニティの中心は小規模で非公開会社なのに、なぜB Labはこのような、多国籍企業向けのムーブメント・ビルダーのプログラムを立ち上げたのでしょうか。

カッソイ氏: 当初から、B Corpの活動は小さい会社や非公開会社だけのためのものだという考えはありませんでした。最初から大きなテントとして築かれ、経済のある特定のセクターではなく、経済全体を変える必要があることを認識していました。また、設立初期の頃は認証を作ること、非常に高い基準での認証にすることしか考えていなかったという自覚もありました。その結果、気づけばB Corpのコミュニティに多国籍企業がいなかったのです。特に、「Bコーポレーション」というのは、当時誰も聞いたことがなく、バカげた考えだと捉えられていましたし、株式会社が、ステークホルダーとか説明責任のあるガバナンスといったことで株主に話をしに行くなんてことは考えられませんでした。

我々は大企業を巻き込むのは長い道のりだろうとわかっていました。でも決して大企業に対抗していたわけではないのです。3年前、我々は大企業から多くの関心が寄せられていることに気づき始めましたが、そうした企業をB Corpに認定するための準備ができていませんでした。我々は大企業アドバイザリー委員会を結成して、大企業に尽くすために何を変更する必要があるか、基準、我々の体制、そして企業がステークホルダー・ガバナンスに向けてステップを踏むにはどうしたらいいかを考え始めました。

そうした課程を経て、認証を受けたい企業がものすごくたくさんあることに気づきました。ダノンのように認証の途上にある企業(※ダノンの子会社にあたるダノン・ジャパンではB Corp取得済みだが、グループ全体では売上の30%にあたる関連会社が取得。2025年までにグループ100%がB Corpとなるよう目指している)は少数です。認証取得に向けてかなりコミットしている会社でさえ5年かかっていて、既にたくさんのことを成してきたのに、まだまだ数年かかりそうなくらいです。そうした時間軸を考えると、そしてどれほど多くの大企業がこのコミュニティの仲間になりたいかを思うと、そうした企業をB Corpの活動に巻き込むような何か別の形を作ろうということになったのです。

なので、B ムーブメント・ビルダーは大企業にとって転機となるものであり、目標ともなるでしょう。一部の企業は、認定を取得したいという理由で参加するかもしれません。それは、認定への道のりに長期間にわたって従事するための具体的な方法です。またある企業は、B  Corpの基準やステークホルダー・ガバナンスを完全に満たせる見込みがなく、これを認証の過程とは捉えないでしょう。Bムーブメント・ビルダーの活動自体を目的と見なすかもしれません。しかし必ずしも認証取得を目標にする必要はなく、これは変革への真のコミットメントを行う機会なのです。

メンディサバル氏: 私はこのプログラムがすごく気に入りました。変化の過程というのはとても大変なものだからです。新しいコミットメントを公言することは大きなオポチュニティとなりますが、リスクともなります。人々は寄ってたかってその企業が何をするか注目するでしょう。そして誰も完璧ではない。だからB ムーブメント・ビルダーは、「私たちは日々どうしたら良くなれるか?」という問いに答える助け舟なのです。

デビボイス氏: B ムーブメント・ビルダーにおける、基準の厳しさと、より多くの人を巻き込んでいくという包括性と、まだ完璧ではないプロセスと、どうバランスを取っていくかをもう少し話していただけますか?

カッソイ氏: B ムーブメント・ビルダーは現在4社による試験的段階にあります。そこで、B ムーブメント・ビルダーになる資格が、B Corp認証の資格とどのように適合するかについて見ていきます。B Corp認証では認定プロセスを始める前に、全ての企業にディスクロージャー質問(※武器・違法なもの・環境負荷の高いものなどの販売有無や法的罰則の履歴など、回答そのものは得点に関係ないが、認証受けるに相応しい企業か、バックグラウンドを調べる目的で設定されている)に答えてもらっていますが、これらの最低限の要件のいくつかはB ムーブメント・ビルダーの資格にも採用する方向で進めています。

B ムーブメント・ビルダーの企業は、いきなりB Corpのレベルで事業活動する必要はありません。つまりそれが過程であるということなのです。我々は、B Corp認証の基準を満たせない企業に向けた包括的なプロセス構築しようとしているのです。しかし同時に「B」ブランドの厳格さは維持したいと考えています。最低限の要件設定とディスクロージャー質問への回答、またBIAを使用して自社を測定し、目標を設定し、それらの目標に対して継続的な改善を示すといったことを求めていきます。

さらに、ムーブメント・ビルダーには、ステークホルダー・ガバナンスについて、完全に採用する前であっても、公に声明を発表することを期待しています。制度変更の必要性について、公に、特に株主に対して話をするというのはこのプログラムの一部でもあるのです。こういった株主などとの対話を変えることが、変革を起こすのに非常に重要な部分なのです。

デビボイス氏: それが、Imperative 21とRESETのキャンペーンを実施したことにもつながっていますか?
(※B Corp認証企業が中心となってImperative 21というビジネスネットワークを設立。世界最大の新興企業向け株式市場であるNasdaqの建物の大画面にRESETキャンペーンの広告を表示するなど、大々的にアピール。imperativeとは差し迫って絶対に必要という意味で、気候変動や人権問題など21世紀の課題に今取り組まなくてはならないという意志が込められている。そのキャンペーンRESETは、様々な弊害を巻き起こしてきたこれまでの資本主義のあり方を一度リセットし、新しいやり方でよりよい社会を築こうというもの。)

カッソイ氏: その通りです。 Imperative 21は我々にとっても重要なものだったので、創立を手伝い、(同じくB Lab創設者である)ジェイが主要メンバーを務めることにしたのです。エコシステムの変化を起こすには1つの組織だけではダメだと思います。この新しいやり方がどういうものか例を以って示すリーダーがいる信頼できるコミュニティを築くことによって、B Corpの活動は、変化を巻き起こすための秘伝のタレのようなものになると思います。

我々だけでなく、思慮深い資本主義(conscious capitalism)や持続可能な資本主義を掲げている他の組織も大事です。Imperativeという共通認識を持って、こうした組織とコラボしながら活動することで、文化、期待、そして最終的には企業行動を変える可能性がより高くなります。そしてそれは最終的に政策やゲームのルールを変えます。なので我々はRESETの活動にとてもわくわくしています!

デビボイス氏: 素晴らしいですね。B ムーブメント・ビルダーについて話題を戻すと、私はメンター企業とB ムーブメント・ビルダー間のメンターシップという要素がとてもいいと思います。これはプログラムのコアな部分だと思いますが、どうやってそのアイディアが出てきたのでしょうか。

カッソイ氏: B ムーブメント・ビルダーの企業が外部に対してもステークホルダー資本主義への支持とコミットメントについて公表するのと引き換えに、我々はそうした企業の従業員を変革に参画してもらえるようにするサポートを提供したいと考えています。従業員の参画は、企業を変革するプロセスにおいて必要不可欠です。ダノンのCEO、エマニュエル・フェイバー氏は、これについて明確に語っています。彼はその考えを強く信奉していて、変化は最終的には下から来るものだ、と考えています。そして、それには社内のとてつもなく多くのサポートと全従業員への教育が必要です。

大企業は絶えず変化しているという、重要な点に基づいて、企業間のコラボレーションを設定しました。我々のコミュニティには既にB Corp認定された大企業がいて、それがどれほど長く続いていく道のりであるかを知っています。例えば、ナチュラがB Corp認定された後、ボディショップとエイボンを買収しました。これは会社にとって劇的な変化であり、何らかの方法で認証プロセスを再検討したり、やり直したりすることもあるかもしれません。ナチュラとダノンはどちらもB ムーブメントビルダーの企業よりもはるかに進んでいる一方で、まだまだ旅の途中にあるのです。   

B ムーブメント・ビルダーの大企業の従業員にとって、B Corpの大企業からの学びは大きいということに気づきました。B Corpの大企業はまだ同じような課題を抱えてはいますが、一歩先を行っています。さらに、既にこのコミュニティにいる他の大企業にとっても、学んだことを共有する場となるのです。

メンディサバル氏: このプログラムは、企業が認知から理解、そして提唱へと進んでいくのを手助けすることを目的としています。私たちB Labとメンター企業は、困難でありながらもわくわくする変化を起こすためのこのプロセスに従業員を参画させるのに使えるテンプレートを提供しています。ムーブメント・ビルダーの企業はそれを自企業のものにし、経営者層からの話に織り込み、会社の文化に沿ったユニークなやり方でコミュニケーションしていきます。B ムーブメントビルダーの企業が、私たちの提供したものによって既にどのように実行されているかを見るのはとても感動的です。私たちが実施している、このコラボ型のメンターシップというアプローチの力を示しているんだと思います。

デビボイス氏:  アメリカの企業はどこに行っちゃったんですか?ムーブメントビルダーの企業はヨーロッパとラテンアメリカの企業ですよね。

カッソイ氏: いい質問ですね。実は密かに活動に参加している企業もいます。特にヨーロッパでは、(環境や倫理などに対し)政府の規制があるので、ステークホルダー・ガバナンスを公言することは、多くのアメリカ企業よりも容易だったりします。ラテンアメリカでは、多くの株式会社が実際は依然家族によってコントロールされており、ステークホルダー・ガバナンスについて公言することをいとわなかったりします。

アメリカの企業もこれから来ますが、少しゆっくりやってきます。この6か月の間に起きたたくさんのことが流れを変え始めました。例えば、B Corp認証を取得しているAmalgamated Bank やダノンがB Corpであることについて株主の反対をうけていないことや、 Lemonade (保険テックスタートアップ、ソフトバンクが約127億円投資するなど他のVCからも注目を浴びている) や Vital Farms(食品メーカー、上場後の時価総額が1300億円超え)のIPOなどです。これらは全て、投資家に配慮するアメリカ企業にとってゲームチェンジの参考になります。アメリカの企業は第二弾で来ます。

メンディサバル氏: ほんとですよね、アメリカの企業は、Lemonade、Vital Farms、Amalgamated Bankといった例を参照すべきです。こうしたビジネスのやり方が長期的な成功、さらには短期的な勝利を得ることができるのだと知ることが重要です。これは特に、消費者が企業の価値観にかなり注目しているというコロナ禍の文脈にも当てはまります。 

デビボイス氏: もし魔法の杖があって、ステークホルダー資本主義を実現するために何か1つだけ変えられるとしたら、それは何でしょうか。

カッソイ氏: 何かシステムを変えたい時には、政策から変える必要があります。それについては、これから数週間のあいだでいくつか大きなことが起こりますが!(この後、政策提言やグローバル組織との共同宣言など続いた。2020年度活動実績を参照。) B Corpムーブメントは、こんな風にできるんだという強力な例を示しているのですが、それも、金融経済に身を置く投資家たちでいっぱいの、より大きな経済システムの文脈で行われています。そして、そのより大きな文脈の意味は、私たちが自由で公正な市場を構築したいのであれば、変化のために、このB Corpコミュニティだけでなくすべての人のためのゲームのルールを考える必要があるということです。


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さすがB Lab、立ち上げてから15年、法律まで変えてしまい、世界74か国・3700以上の企業を巻き込む、という偉業を成し遂げたからこそできる取り組みかもしれない。理想を掲げ、キラキラとした活動に見える一方で、大企業の一番の悩みである「株主との対話」を、このプログラムを実験台にして、本気で乗り越えようとしている。

この活動に興味ある企業は随時問い合わせを受け付けているようだが、今後どういった企業が仲間に加わっていくのか、楽しみである。
もしあなたの属する大企業も、「今がアクションを起こすべき時」と考えているのであれば、このムーブメントに参画してみるのも一つの手だ。