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内閣府委託調査に見る、BIAの受け止め

内閣府委託調査に見る、BIAの受け止め

内閣府の「社会性認証」に関する委託調査 「社会性評価・認証制度に係る調査・実証事業 調査報告書」でBIAのことが取り上げられている。BIAの概要と共に、B Corp認証機関であるB Lab(B ラボ)やB Corp取得企業などのヒアリングなどを経て分析を行い、認証におけるエコシステムの形成の重要性を指摘した80ページ強のレポートで、日本ファンドレイジング協会により作成された。

そもそもこの委託事業は第二次安倍内閣が発足した日に内閣府に設けられた「まち・ひと・しごと創生本部」という地方創生のテーマから派生している。人口急減・超高齢化という課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指して設立された組織だが、地方に存在する多様な課題に対処するための「社会性」と、雇用創出や成長の観点から「事業性」を両立させたビジネスの創出が欠かせないとの認識から、そうしたビジネスを適正に評価し、資金や人材を集めビジネスを育てるにはどういった枠組みが必要かという観点で調査が行われた。この「社会性」を測るものとしてB Corp取得に必要な自己アセスメントであるBIA、「事業性」を測るものとして国際的な統一基準設定を目指すImpact Management Projectのフレームワーク 双方を使用し、「インパクト投資」を行う上で有用かを実証している。

なぜB Corpを取得するのか

調査の中で複数の企業にインタビューを行っており、B Corpについてはそもそもなぜ認証を取得するのかという質問を投げかけている。主に下記4点が挙げられたという。

人材獲得:企業の存在意義に沿って利益を生み出す企業に勤めたいという求職者が増加、特にミレニアル世代の中でも向上心も仕事意欲も強い優秀な層
競争力:同業他社との比較において、B Corp 認証を取っていた方が競争力が強い(B-to-C であれば対消費者、B-to-B であれば対取引先)
企業使命の維持 (Mission Lock):企業の持ち主が変わったりしたときに、もともとあった value 等がゆるがないようにするため
コミュニティとの関係構築: 企業価値が合致するサプライヤー等との経済循環の仕組みをつくりたい

また調査の中でヒアリングの結果からB Corp認証のSWOTプロットも行っている。


なお、B Corpの法人形態版であるベネフィット・コーポレーションに関するヒアリングも行われているが、上記B Corpの弱みとして挙げられている認知度については、ベネフィット・コーポレーション法の存在するアメリカでも認知度が高くないという課題感があるようだ。

組織評価と事業評価の実証

事業の社会性の評価・認証には組織運営の健全性等を評価・認証する「組織評価」と、実施している事業の成果やインパクトを評価・認証する「事業評価」のハイブリッド手法が7つの企業に対して実証が行われた。前者についてBIAを使い、後者はImpact Management Projectの開発した「5つの側面」を活用したインパクト情報整理をし、その結果を投資家が評価している。

Impact Management Projectは2018年に発足、国連開発計画(UNDP)、国際金融公社(IFC)、経済協力開発機構(OECD)、国連責任投資原則(PRI)などの国際機関を始め気候変動リスク関連情報の収集・開示を行うCDPやB Corpもメンバーとなり、人々と環境に関する影響を測定し報告するグローバル統一の基準構築を目指している。5つの側面とはWhat, Who, How much, Contribution, Riskで、それぞれのカテゴリーにおける自社の指標を特定し結果を評価する。ちなみにこの分析に使用するワークシートはここからダウンロード可能で、それぞれの項目の詳細な解説のリンクもある。環境省はその使い方を含めたガイドブック「グリーンから始めるインパクト評価ガイド」を発行している。

Impact Management Projectの5つの側面

実証の結果、IMPの枠組みで組織全体のインパクト創出の戦略を策定し、それを体現していくための組織のあり方やステークホルダーとの関りをBIAを通じて把握することで、インパクト・マネジメントのプロセスがより豊かになったり、インパクト創出のレバレッジポイントを探ることに役立ったそうだ。「事業」と「組織」の両面で見ることの重要性が再確認されている。

BIAの課題

BIAに関しては良く聞かれる率直なフィードバックが述べられている。BIAを受ける側からすると、「マイノリティ」、「フルタイム雇用」「カーボンニュートラル」「取引先選定基準」などにおいて日本の文脈では難しいという印象はぬぐえない。投資家視点では、特にBIAは「今どうか」という評価なので「将来どうなりそうか」という投資判断にかなり重要な問いの答えを得るには投資家自身で情報の補足が必要となる。

また提言の中で認証を支えるエコシステムづくりの重要性を指摘している。制度だけが存在していても、その意義や価値が伝わらなければ「ムーブメント」や、より多様なステークホルダーの認知や行動変容に繋がらないし、投資家にとって使えないものとなってしまう。

 

B CorpやBIAは、投資を呼び込み、安定した収益を生み出し、事業を継続するために完璧なものではない。しかし1つのフレームワークとして採用したという企業は少なくない。

インパクト投資のパイオニアと自負する、国際機関であるIFCが民間セクターと共に投資の評価や報告に使える統一基準の一部を『共通インパクト指標』(Joint Impact Indicators)として2021年3月に発表した。その指標には女性管理職の数や、投資により増加した仕事の数、温室効果ガスの排出量、水道使用量などBIAでも問われている項目がいくつか含まれている。今後こうした基準が収斂されていく中で、BIAと共通の項目も出てくるだろうし、BIAの改訂の中で国際基準に合わせていくであろう。何か完璧なものを待つより、まず今ある枠組みを活用して、行動を起こしてみるのもいかがだろうか。