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従業員ハンドブックとは

従業員ハンドブックとは

日本では馴染みの薄い「従業員ハンドブック」。B Corp認証取得に必要な自己採点アセスメント・BIAで、いくつかの点について明記されているかが問われている。従業員ハンドブックは就業規則のようなものだが、アメリカで一般的に入社時に会社の概要や福利厚生などと共にパッケージとして渡されるものである。

B Corpの認証機関であるB Lab(Bラボ)からベストプラクティスガイドが発行されているので、その内容を見てみよう。

従業員ハンドブックとは

B Labの定義によると、「従業員ハンドブックとは、雇用者の就業規則や方針が記載されたマニュアルのことで、その他にも従業員にとって有益な情報、例えば企業の歴史、目標、顧客や地域社会に対するコミットメントなども含まれる」とある。
また従業員ハンドブックが「企業と従業員の間の最も重要なコミュニケーションツールの1つ」としており、文書で明示されたものが拠りどころ、といういわゆるローコンテクスト(言語に依存。これに対し「空気を読む」は文脈や価値観に基づくコミュニケーションで「ハイコンテクスト」と呼ばれる。)の文化の国にとっては大いに納得されるところである。会社が従業員に期待することと、従業員が会社に期待することの双方がわかる文書であることが求められているため、ただ会社のルールを記載したもの以上に、その存在を知り、理解の手助けとなる文書でなければならないとしている。

B Labは、従業員数が5人以下であれば、就業ルールの口頭でのコミュニケーションも成立しうるとし、互いに柔軟な対応ができる利点もある。それ以上の組織であれば、企業文化を伝える手段としても活用でき、従業員に対して良い印象を与えられる。何か企業と従業員間でトラブルが起きたときにも参照する者となるが、アメリカでは裁判の証拠として従業員ハンドブックが契約書としてみなされることがあるため、実際の運用には法律の専門家によるレビューも必要だ。

従業員ハンドブックの内容

B Labが紹介する具体的な内容は下記の通り。

A. 会社の概要
会社の歴史、成長過程、目標、倫理観、経営哲学についての簡単な紹介。


B. 機会均等に関する声明
従業員の宗教・年齢・性別・人種が、採用・昇進・給与・福利厚生に一切関係しないことを明記。


C. 労働時間
1週間の労働時間、昼食と休憩に割り当てられた時間の定義。


D. 給与と業績評価
給与はデリケートなトピックであるため、具体的な数字や目標値を記載しない方が賢明。ハンドブックでは給与明細が届く時期、昇進や昇給の方法、従業員の分類(フルタイムかパートタイムか)などの一般的な記述、前払い・無給休暇・時間外労働・その他例外的な扱いについての記載で十分。
また業績評価に関する方針も記載し、従業員がどのような分野で評価されるか、その頻度(例:入社記念日、年1回、半年に1回など)を正確に把握できるようにする。
必要に応じて期待した業績に満たない際には、従業員にいつでも書面等にて助言する旨を明記するとトラブル回避につながる。
さらに社内での採用(異動)に対し社外で採用する方針についてもこのセクションに記載するのが適切(例えば、ある社員が、新設されたポジションを狙っていたのに募集が社外のみに向けられチャンスが奪われたと感じてしまうことを防ぐなど)。

E. 福利厚生
自社の保険に関する方針(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)、誰が加入できるのか、育児休暇・産前産後休暇はどうなっているか、会社を通じて追加で加入できる保険(アメリカでは歯科保健)について記載。
また休暇・病気・徴兵・忌引・個人的理由・家族の理由・治療・裁判員など、あらゆる種類の休暇に関する方針を説明。

F. 年金・利益分配制度
日本の従業員持株会のような制度について、いつ・どのように従業員が資格を得るのか、どれくらい出資できるか、従業員負担が要求されるのかなどについて記述。

G. 行動基準・倫理規定
従業員ハンドブックを制定する最も重要な理由の1つは、従業員が会社から期待されている行動を理解することである。このために、望ましい行動(服装や時間厳守など)、セクシャルハラスメントや人種・性的差別に関する方針、アルコール・薬物・タバコの使用に関する方針(雇用前のスクリーニングや何かあった際の対応を含む)を記述。また、従業員が違反行為を発見した場合どのように対処するのか、どのような懲戒処分を行うのかについても記載。

H. 解雇
犯罪行為、業績不振、不正行為、セキュリティ違反、反抗、欠勤、会社の方針違反、安全衛生の脅威、服装、倫理規定違反など、従業員を解雇する正当な理由を列挙する。
また、ハンドブックが契約書ではないことやいつでも変更可能であること、「at will」雇用(アメリカの労働法において、期間の定めのない雇用契約は会社・従業員のどちらからでも、いつでも・いかなる理由でも・理由がなくても自由に解約できるという原則。会社と従業員の関係は保証されたものではないということ)、なども記載、最後に苦情処理手続きの概要を説明。


I. 一般的な情報
主に新入社員向けに、移動手段や昼食の時間帯、駐車場の場所などを示すべく、周辺地図、駐車パス、組織図、電話番号リストなどを掲載。
また、贈答品、社用車の使用、交通機関・利用券の使用、私用電話などに関する方針記載。


J. フォーム
病欠、休暇、セミナー参加、下請け契約、見積もり依頼、苦情処理、ファイリング、旅費精算、業績評価、給与の前払い、事故報告など、提出書類のフォームを添付。


K. 読者の認知
従業員に確実にハンドブックを読んだことを承諾するサインを得て、企業側の説明責任を果たしたという法的責任を明確にする。

従業員ハンドブックの新しいかたち

働き方も生き方考え方も多様となり、移ろいゆく世の中でも従業員の企業へのグリップを高めるべく、企業が従業員に対して期待する行動や共有したい価値観について、「カルチャーブック」として社内外に向けユニークな見せ方で発信している企業も多々ある。

メルカリ-カルチャーブック-b-corp
メルカリのウェブページより
ユビー-カルチャーガイド-b-corp
ユビーのNotionより

就業規則は従業員とのトラブルを避け、企業を守るための規則の明文化であり、また大企業にとって就業規則の改訂は簡単にできるものではないが、少人数規模の企業でこれまで就業規則がなかった会社は、B CorpをきっかけにBIAで問われている要件を満たしつつ、カルチャーも示した従業員ハンドブックを作ってみるのは、今後の企業の規模発展にもつながる良い取り組みかもしれない。