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B Labの目指す経済システム変革

B Labの目指す経済システム変革

2020年8月、マッキンゼーが主要刊行物である「マッキンゼー・クォータリー」で、マッキンゼー・パブリッシングのシュワルツ氏が、B Lab(Bラボ)創設者の1人であるカッソイ氏へのインタビューをしている。その記事「Declaration of interdependence: B Lab Global’sAndrew Kassoy」の内容を紹介しよう。

このインタビューの目的は、相互依存したこの世の中で、ビジネスリーダーたちがどう進んでいけばいいのかということを解明することだ。この記事の冒頭でこう述べられている。

「システム」を変えるための最初のステップは、自分がその一部であることを認識することだ。 有能なリーダーは、無数の支持者が存在し、そのうちの1つだけを絞り込んでも長くは続かないということを理解している。

アメリカ版経団連であるビジネス・ラウンドテーブル(BRT)は、様々な利害関係者が存在するなかで、企業の存在目的を株主だけに言及してきたが、2019年8月に「企業の目的に関する声明」を発表したことは大きなインパクトを与えた。加速する気候変動、解決しない人種差別、それに加えて新型コロナの感染拡大で、相互依存、つまり地球規模で全てのステークホルダーがそれぞれの便益を考え、力を結集することの重要性を多くの人が感じるようになったであろう。それをずっと前から考えてきたB Labは、何を私たちに教えてくれるのだろうか。

(以下インタビュー記事)

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シュワルツ氏:ご自身の経営経験と、共同創設者たちの経験は、B Labのミッションにどのように影響していますか?

カッソイ氏: 私はバート・ホウラハンとジェイ・コーエン・ギルバートと共にB Labを立ち上げました。 彼らはAND1というバスケシューズとアパレルを扱う会社を、ガレージで創業しておよそ2億5000万ドルのグローバルビジネスにまで成長させる12~13年の過程の中で、事業の経営者として、起業家として、会社が責任を負うだけでなく、社会にプラスの影響を与え、経営者だけでなく会社の所有権の変化があったとしても揺るがないDNAを真髄に持つ会社にするにはどうしたらいいのか、ということをずっと考えていました。私自身は16年間プライベート・エクイティ・ファンドにいましたが、そこで同じような問題を目にし、別の資本市場の形は無いのかということを考え始めていました。

ちょうどそのころ、バートとジェイはAND1を売却しており、我々3人で次のキャリアをどうしようかと話していて、我々の価値感とか、民間企業での経験を活かしたいと考えていました。 みんなにとって「光り輝く丘の上の町(レーガン大統領がアメリカ国民の拠り所として発言、もともとピューリタンが新約聖書から引用)」の例となる会社を築くことから、文化や市場のルールによって制約されながらもそれぞれのやり方で経営する起業家や大企業の存在を認識するに至るまで、我々はひと通り経験しました。

そして我々はすぐに気づきました。経営者自身、投資家、消費者、会社で働く人々など、あらゆる利害関係者にとって、会社が社会にプラスの影響を与え、それが有意義で永続的な方法で実現できているかを把握できるような包括的な市場構造がこの世には存在していないと。そこで、資本主義が株主だけでなくすべての利害関係者に対して価値を創造できるようなシステムの変革にフォーカスした組織を立ち上げようという考えに至ったのです。

シュワルツ氏: それはBRTの「企業の目的に関する声明」の考えによく似ていますね。この声明は、社会が企業に期待することの表れだと思いますか?

カッソイ氏 そうだと思います。 時を経るごとに、我々が作った基準は信頼を得るようになり、B Corpになった企業は他の企業に刺激を与え、ラリー・フィンク(アメリカの資産運用会社ブラックロックCEO)やBRTによって提起された問題がより主流になってきました。この1年半でかなり加速してきました。BRTの発表の後、Fortuneトップ50に名を連ねるような大企業が何社もB Corp認証について問い合わせてきました。BRTの発表がもたらした商文化変革の一番重要な要素というのは、こうした企業に、株主第一の視点のみに限らずビジネスについて議論するための「鎧」のようなものを提供したということです。

シュワルツ氏: これまで株主第一主義がシステムの基盤にあったからということですよね。

カッソイ氏我々、民間企業出身の3人にとっての初期の発見の一つが、結局のところ株主第一主義が資本主義システムを損ねているということです。 株主第一主義は資本主義のプログラミングエラーだということがだんだん明らかになってきました。B Labを創設した13年前にどう表現したかは覚えていませんが、我々はミルトン・フリードマンの株主第一主義の考えに問題があると考えていました。今年は実はフリードマンが書いたエッセイの50周年にあたるのですが、彼がそれを書く以前に既に多くの人が議論していた思想が広まるきっかけとなったものです。


BRTの声明が、株主第一主義の原則から離れる必要性を明確に認識しているということが重要です。私たちが求めているシステム変革は、行動の変化、文化の転換、構造の変化といったものの相互依存的な組み合わせが必要だと私は思います。単に新しいメッセージに変えるだけでなく、こうした変革を行うことにコミットしない限り、そしてゲームのルールを変更して法的責任を負わない限り、利害関係者に対しての結果を大きく変えられる可能性は低いと考えています。

シュワルツ氏:フリードマンの論点に関して、こう言う人がいると思います。「ビジネスリーダーたちは、自分のお金でやるのなら、誰を対象にしようともその人たちに対する結果を変えるようとすることは自由にやってもいいだろう。しかし、企業のCEOとして、企業のお金で自身の選択した目的を遂行してもいいのだろうか?」

カッソイ氏フリードマンの時代背景に沿って議論することが重要です。単純に企業の慈善活動について議論するなら、私はフリードマンに賛成です。多額の企業資金を慈善活動に浪費して、あちこちの理事会メンバーになって、営業圏のコミュニティ内での会社と自身の良い評判を強固なものにしようとしたCEOの例はたくさんあります。

でもそれは全くもって我々の論点ではありません。企業がどうお金を与えることができるかではなく、企業の利害関係者への価値創造ついて話しているのです。企業に影響を与える相互依存性を考慮しつつ、企業が利害関係者についてどのように捉え、どう価値を創造するかを議論しているのです。 例えば、企業は労働者に生活できるだけの賃金を支払っているか、そしてその結果、低賃金や環境損害といった問題を解決するために巨額な政府支出を必要としない、強力な経済を可能にする強力なコミュニティを構築しているか、ということです。

シュワルツ氏: しかし、コロナの感染拡大により、焦点を絞った利益重視のモデルがまだ役割を成していることが露呈したと思いませんか? 例えばワクチンの接種、迅速な検査、人工呼吸器の製造に、投資家が資本を割り当てたら全ての人にプラスになりますよね?

カッソイ氏そうですね。そして我々は、ビジネスの力を活かして社会の最大の課題を解決しようと提唱しています。生産ラインを自動車から人工呼吸器に切り替えることで儲けることには何の問題もありません。しかし、回復力の点ではどうでしょう。前回の不況では、同規模・同業種の企業と比較した時に、B Corpは不況を乗り切る可能性が63%高くなりました。今回はまた別の危機ですが、景気後退に耐えるためのリソースが豊富な大企業よりも、中小企業の方がダメージが大きいと私は思います(※B Corp企業は中小企業が多い)。システム改革における最初の条件がシステム障害の認識であるとするならば、この強靭ではない経済システムというのは今回のコロナで示せますよね。企業は耐性が無く、特にその企業の従業員に耐性が無いと言えます。

コロナは明らかに企業のせいではありません。しかし、経済システムがコロナに強く対峙できるようなものでないことは確かです。 そして、語弊を恐れずに言うと、これは気候変動のための非常に良い練習になったと思います。気候変動は我々のやり方を変えなければ、はるかに大きな災害となります。ウイルスには、少なくとも最終的にはワクチンがあり、その影響を制限することができます。気候変動のシステムレベルでの影響は更に大きいものです。私はコロナを警告サインと捉えています。 それは、経済システムにおいてより強靭な構造と、より公平な方法が必要であるということを示唆しているのです。


企業の利益最大化のために頭脳明晰な精鋭たちが戦略を考える、世界最大のコンサルタント企業がこうしたインタビューをしたことには非常に意味があるだろう。そしてそうした企業側に立ってシュワルツ氏は鋭い、現実的な問いを投げかけている。またそれに対し、更に説得力のある答えをB Lab創設者のカッソイ氏が返している。

カッソイ氏が語弊を恐れずにした発言、コロナが気候変動問題解決に向けた良い練習を与えた、というのは長い目で見れば、かなり納得できるのではないだろうか。B Corpコミュニティとしても「相互依存性」を更に強化した2020-21年となっている。未曾有の事態の中、従業員やコミュニティのことを考え、B Corp認証企業たちがリーダーとして迅速に行動を起こし、そうした好事例をB Labが共有し、B Corp同士が協力し合い、そしてその動きはこれからも続いていく。

株主第一主義からの脱却、コロナ、ますます悪影響を身近に感じるようになった気候変動。

世界は今、確実にB Corpの波が来ている。