B Corp認証基準変更に関するよくある質問

B Corp認証基準変更に関するよくある質問

2024年以降の基準改定が予定されているB Corp認証。200問近くのアセスメントに回答し80点のボーダーラインを超えればどこで得点しても良いという現行のものから、10の必須項目を満たしていなければB Corpになれないという大幅改定。変更にあたって認証を管轄する本部・B Labも2年近くの年月をかけて丁寧にプロジェクトを進行、あらゆるステークホルダーを取り入れることをモットーとしている。BIAに関するFAQをまとめたページでは、今回は基準改定について突っ込んだ想定質問も並んでいる。本記事ではその一部を紹介しよう。

(以下、原文からの訳は青色、解説は黒色。)
 

この改訂の原動力は何か?

既存の要件であるパフォーマンス要件(アセスメントを通じてどのような取り組みを実際に実行しているかを証明するなど)は多大なる成功を収めているが、同時に限界と課題もある。

  • B Corpであることの意義を、わかりやすく、インパクトのある一貫した方法で明確に説明することが困難
  • 地域・規模・国・業界など、特定の企業の状況に合わせて十分にカスタマイズしきれていない
  • 点数ベースの評価基準の変更と、それが企業の今後の認証にどのように影響するかについての課題
  • 認証の要件として企業が示すべき継続的な改善が不十分
  • 最も影響力のある活動でなくても様々な活動に取り組み、それを実証することが認証の根幹となっていることへのリスクと課題

現在のパフォーマンス要件の構造の中で上記の点のいずれかに対処することは、困難であり、不可能かもしれない。またそうした課題以上に、B Labや認証の初期要件が開発された当時とは、世界が大きく変化している。緊急事態下にある気候変動対する認識とコンセンサスは高まり、我々の健康と幸福を脅かす世界的なパンデミックが蔓延、そして現在進行中の人種的な不公平を人々より明確に認識し、街頭に繰り出しそれに対処するための行動を要求している。これらの問題すべてが重なり、B Corpムーブメントといった集団的な活動だけでなく、私たちが求める目標、つまり、経済システムをより包括的で、公平で、再生可能なものにリセットすることの重要性が、これほどまでに認識されたことはなかった。このムーブメントに使命感を持ち、我々が難しい問いを立て、ステークホルダーの声に耳を傾けながら、未来を見つめていく必要がある。

この15年近くで、6回の改訂を経ているというのは平均すればだいたい毎3年もたたないうちに改善し続けているということである。それは環境や社会、ステークホルダーにとって良いビジネスであるためには常に完璧な状態であることはありえず、それを意図したシステムを設計した証であり、改善を続けていこうとするB Corp企業たちの姿そのものでもある。今回の改訂もその流れの1つが発端かもしれないが、特に2020年という、新型コロナ・COP26・Black lives matterに象徴される社会・環境課題がB Corp界を大きく変えたのは言うまでもない。認証申請企業の激増、トップの交代、そしてこの基準改定検討と、この数年の動きには目が離せない。「B Corpであるとはどういうことか」をこれまではっきりと示せてこなかった、言い換えればそこにはある程度のフレキシビリティがあったことは良さでもあったが、B Corp認証企業がどんどん増え、むしろB Corpでなくても「サステナビリティ」を謳う企業が増えていく中で、よい会社のリーダー格として存在するB Corpとは何かを再定義する時期に来たということであろう。あらゆる社会・環境課題にできることをやっているだけではもう遅い、という危機感と責任感の表れでもある。

 

B Labのこれまでの基準開発プロジェクトとの違いは何か

今回は、BIAをどのように改善するかという段階的な変化に焦点を当てるのではなく、パフォーマンス要件全体の構造をどのように改善できるかを問うものである。B Corpムーブメントが始まって以来、B Labによる継続的な基準改定は、インパクトの改善と最適化を継続するための中核的な要素となっている。SDGアクションマネージャーのような新しいプログラムを導入するような革新に加え、BIA自体も6回改訂され、新興国市場vs先進国市場の新しい評価方法の作成、業界特有の課題などを追加、構造や採点方法の進化などが含まれる。同時に、基準開発のプロセスを拡大・進化させ(地域ごとに基準諮問委員会を立ち上げ)、懸念される業界について要件や見解を展開するなどしてきた。これらは重要であると同時に複雑さももたらされ、継続的な改善方法についてのフィードバックが寄せられている。こうした進化にもかかわらず、BIAの中核的な側面とパフォーマンス要件の決定方法はほとんど変わってこなかった。

懸念される業界というのは、武器の販売、オフショアでの金融ビジネスなど社会や環境に著しい懸念をもたらす可能性のある分野で、B Labがその分野の特定と要件・見解を公開している。基本的にB Corpはどんな企業も申請することができるが、B Corpの品格を保ち、説明責任を維持するために基準諮問委員会と共に継続的に更新している。

 

この改訂がもたらす潜在的なメリットは何か

これらの新しい基準は、「責任ある持続可能なビジネスとは、現在および将来においてどのようなものなのか」という問いに答えるものである。これらの基準は、以下のことを目的としている。

  • 最も差し迫った社会課題・環境問題に対処する中核的な実践に焦点を当てることにより、B CorpコミュニティやB Corp 基準の採用に努めるすべての人々のインパクトを向上させる
  • ステークホルダーがB Corpの意味を理解しやすくすることで、基準の明確性を向上させる (また、これから認証を取得する企業が、認証を取得するために必要なことをより容易に理解し評価できるようにする)
  • B Corpコミュニティを含むステークホルダーのニーズと期待にこたえるような課題であると認識する

同時に、ステークホルダーの声を聞き、それを取り入れるために、徹底的かつ配慮ある開発プロセスを担保し、起こりうるリスクを管理することも重要である。これには、十分な調査、意見交換の機会、テスト、パブリックコメントなどが引き続き必要となる。

 

今回の改訂の目的は、基準をより厳しくすることか、より易しくすることか

このプロセスの目的は、必ずしも認証の難易度を上げたり下げたりすることではなく、より焦点を絞り、有意義で、インパクトのあるものにする可能性がある。しかし、どのような変更も将来的に企業が認証の資格を得るために必要なものに影響を与えることを意味するため、特に既存のB Corpコミュニティに対しては混乱を避けるために、慎重に管理・展開される予定である。

 

既存のB Corpコミュニティへの影響は

基準に変更がある場合は常に、コミュニティへの混乱を避けるように実施されており、既存のB Corpを自動的にコミュニティから排除するような形で行われることはなく、今回も同様である。既存のB Corpが新しい要件に移行するためには、要件の性質に合わせて、少なくとも合理的なスケジュール(例えば、1認証期間)が設定される。新しいパフォーマンス要件は段階的に展開、各段階に数社単位で実施予定。

B Corp認証は3年に一度の更新期間があるため、1認証期間というのはその3年間を指す。既存のB Corp企業にとってはどのように切り替わるかが一番関心が高いが、今は基準そのもののドラフトを考案しているので、プロセスについての設計はこれからということになっている。

 

認証取得に向けて待機している企業への影響は

認証取得の手続きを進めている企業にとっても、混乱を最小限に抑えることが目的のため、新基準は一定期間を経て段階的に導入される予定。

 

すべての企業がまったく同じ要求事項を満たす必要があるか、企業の規模や業種などはどのように扱われるか

基準の影響力・明確性・応答性を高めるという目的に従いつつ、今回の基準改定において重要視される理想の 1 つは、認証基準について状況に応じた対応をある程度の量と質で担保することである。基準を文脈化する際には、常に柔軟性と規範性のバランスをとる必要がある。完全な柔軟性を企業に与えることで、企業独自の文脈をより容易に考慮することができるが、規範性の欠如は、基準の普遍性、比較性、検証能力に影響を与える恐れもある。

ドラフトでは、各トピックにおいてその精神とビジョンの普遍性が維持されている一方で、企業規模やセクターによって要求事項を満たす方法が異なり、いくつかの要求事項を満たす方法についてオプション性を持つことなどにより、異なる企業の状況に応じた対応についていくつかアイデアが示されている。新基準の中で状況に応じた対応の扱いはドラフト文書(p86)を参照。

今回の基準改定におけるキーワードは「contextualization」(文脈化)である。つまり企業が属する国や地域、業種や規模などの性格などによって、どのように求める基準を適切に当てはめるかということである。冒頭に挙げた課題で、「地域・規模・国・業界など、特定の企業の状況に合わせて十分にカスタマイズしきれていない」とあり、現段階でもそれらによって質問が変わる仕組みになっているのだが、それだけでは不十分であると認識されている。これまでは審査員との対話を経てカバーされてきたようなものだが、誰にでもわかりやすくありながら置かれている状況をきちんと考慮する、バランスの取れた基準を目指しているようだ。

 

これまで認証取得のために投資してきた努力はどうなるのか

世界に良い影響を与え、リーディングカンパニーとなるために投資した努力は決して無駄にはならない。新しいパフォーマンス要件の意図は、これまでの努力を無効にすることではなく、むしろ今後、今日の世界で時代のニーズとなっている一連の包括的な課題に焦点を当てることである。

これまでの認証サイクルを経て共有された情報はデータベースに残り、アクセスが可能である一方、現在認証を受けているB Corpは新基準の枠組みの中では異なる達成段階にあるとみられる。過去の取り組みが、新基準のうちいくつかの項目とは合致し、結果として企業側の努力は最小限にとどまる。しかしこれまで自社で優先的に取り組んでこなかったテーマについては、さらなる努力が必要になる可能性もある。

 

この改訂は検証にはどのような影響があるか

検証(Verification)は認証プロセスの重要な部分だが、規格を変更する場合は、その検証の対象を変更する必要がある。基準改定により、焦点を絞った検証を行うことも考えられ、その結果、検証プロセス自体がより効率的になり、企業により多くの付加価値をもたらす可能性がある。

 

新基準は、継続的な改善という考え方にどのように対処しているか

ステークホルダーとの対話の過程で、B Corpの基礎は継続的な改善にあると考えられていることがわかった。新基準のドラフト版では、継続的改善は次のような形で取り入れられている。

  • ほとんどの要件は、本質的に継続的な行動と改善を必要とし、それは再認証時に検証される
    (例: ネットゼロ目標の設定と毎年の進捗の実証、人権問題の特定と管理に関する継続的な行動)
    新基準ドラフトでは、所定の期間(再認証時など)における要求事項に対する期待値を具体的に提示
  • インパクト・マネジメントのトピックの中で、企業は他の重要なトピックについて目標を設定し(ドラフトでは、オペレーションのセクションまたはインパクト・ビジネス・モデルのセクションにフォーカス)、それに対して企業が再認証のために進歩を実証する必要があることを提示

 

新基準にはスコアリング(点数づけ)はあるか

新基準では、企業がすべての分野で 80点以上のスコアを獲得することでB Corp認証を取得できるという既存のモデルとは異なり、様々なステークホルダーへの影響 (例: 公正な賃金、気候変動対策) を含む 10 のトピックを特定。得点ベースの認証要件から、企業が各トピック内の特定の要件を満たす必要があるスキームに移行することを目標としている。

同時に、スコアリングは改善の動機付けとなり、比較が可能で、企業が基準を満たす前後などに明確なロードマップを提供している。そのため、スコアリングのメリットを維持し、企業が要件達成とインパクトの向上への道のりを自己評価することを支援するシステムを構築することを目的として新たなスコアリング・モデルが検討されている。

 

インパクト・マネジメントの目的は何か

新基準の枠組みでは、10のトピックを特定し、企業は各トピック内の特定の要求事項を満たさなければならないが、事業のインパクトは広範であり、10のトピックとは直接関係のない「その他のトピック」も含まれる。

従来のBIAに含まれていたこれらの項目は、新基準案の「インパクト・マネジメント」要件に組み込まれ、認証取得の不可欠な部分として維持される。この要件では、他の項目とは違い、パフォーマンスの評価と管理を継続することが要求される。さらにその要件は、IBMを持つ企業と持たない企業で異なっている(後述)。

基準案では、10のトピックに関する具体的な要件と間接的に関連する、もしくは完全に独立した社会・環境問題やベストプラクティスを網羅し、これらのテーマを継続的に管理する必要性を含むBIAの総合的な価値と網羅性を認識している。

 

新基準案では、インパクト・ビジネス・モデル (IBM) の役割はどのように考慮されているか

BIAで取り上げられているインパクト・ビジネス・モデル (IBM) は、持続可能なエコシステムにおける他の基準と比較しても重要な差別化要因の1つと認識されている。ステークホルダーとの協議の結果、事業の影響を管理するだけでなく、地球や社会にプラスの影響を与えるビジネスモデルを積極的に設計している企業の関連性が確認された。

IBMを持つ企業の認識と差別化を継続するために、IBMが事業の重要な位置づけにある企業には、他と異なる要件を提案(異なるアプローチを採用するに十分な規模として、最低ポイントの閾値が必要)。

BIAの中で、1つのIBMで10点以上獲得した企業は、IBM関連の質問のみを実施、それに関する目標を設定。このアプローチは、特定のステークホルダーに対して事業の中核を通してポジティブな成果を生み出すことを重視する企業が、既に企業のインパクトマネジメント戦略と行動の明確な焦点と範囲を定めていることを認識し、一方で中核となる要求事項はパフォーマンス全体におけるある程度の包括性を維持するものである。

 

新基準では、企業のマイナスの影響をどのように考慮するか

リスク基準は、B Corp認証のパフォーマンス要件の不可欠な部分である。既存のリスク基準が、当初から全体の要求項目の中でも特に重要であることをさらに強調するために、新基準ではコアトピックの1つに設定している。

既存のリスク基準においては、BIAの中で開示質問に回答、懸念される業界に属する場合は特定の要件を満たし、必要に応じ別途適格性を測る審査を受けることになっていた。新要件では、苦情処理メカニズム(内部通報)、誠実なコミュニケーション、責任あるロビー活動などのトピックに関連するいくつかの具体的な追加要件を満たすこととしている。

 

新基準は、BIAの既存のトピックとどのように関係しているか、どのように反映されるのか

10のトピックはそれぞれに相互作用し、またBIAでは、気候変動対策、公正な賃金、JEDIなど、10のトピックに関連する質問がすでに含まれており、コンセプト、戦略、ユーザー体験の観点から重要である。

BIAと10のトピックとの相互作用の問題を解決すべく、B Labは以下の原則を検討する。

  • 回答や企業努力の重複を避ける
  • 10のトピックの具体的な要求事項とBIAとの基準内およびプラットフォーム内の相互関係を認識

これらを管理する方法は様々であり、B Labはコアトピックの要件のドラフトに磨きをかけると同時に、様々なステークホルダー、特に技術的側面や認証・検証プロセスに関わる内部のステークホルダーと調整し、可能な限り最善の解決策を見出す予定。