最近B Corp認証を取得した企業5社を紹介しよう。
■ オランダのコーヒー直売店 Bocca
ゴマのフェアトレード仕入業者としてエチオピアに出入りしていた創業者、シモンズ氏が、ある日コーヒー豆の赤い実に出会い、惚れこみ、それを作る農家のオーガニック認証取得を手伝った。近所や友人たちへの販売からリピート客が増え、店を構えるまでになった。Boccaでは「豆からカップまで」を全て一貫して管理している。「フェアトレード」として設定される最低価格のおよそ1.6倍をコーヒー農家に支払っており、顧客へ適正価格で豆を買ってもらうための啓蒙もしている。それ以外にもオランダ国内に避難してきた難民をバリスタとして訓練したり(そして卒業生がBoccaの卸先顧客に)、エチオピアに学校を建てたりといった活動も行っている。気になるコーヒー豆の価格は1kgあたり約3800円程度と、欧州内で買える一般的なオーガニックコーヒーより少々割高ではあるが、そこに妥協はない。自らをただのコーヒー屋ではなく、人と人を結ぶビジネスであるとし、顧客もコーヒーを通じて農家に貢献する一員と捉えている。
ウェブサイトの「サステイナビリティ」ページのトップには、いきなり「サステイナビリティじゃない、Boccaだ。」と書いてある。つまり、サステイナビリティなどという、うわっつらな言葉ではなくて、Boccaとして本当に行動しているのだ、ということを示している。
別のインタビューでシモンズ氏はこう語る。
「空っぽの言葉を言うのをやめるべきだ。サステイナブル、ダイレクト販売、関係…空っぽなんだったら言っちゃいけない。証明して初めて意味を成す。もし何かインパクトを与えているというなら、可視化できるようにし、示して、それでやっと納得できる。勇敢に、且つ透明性を持て。何か付加価値を生み出し貢献したいのなら、既にそれをやっている人たちの仲間に入ってもいい。」
今回のB Corp認定により、正真正銘良いインパクトを与えるコーヒーカンパニーとして、これからも顧客と共にソーシャルグッドを推進していく。
■ ランジェリー専門店 Underprotection
一見普通の下着メーカーに見えるが、その素材は環境に優しいものばかり。
まずはテンセル™リヨセル繊維。木材パルプからできるもので、工程用水はリサイクル、化学溶剤は99%を超える回収率で再利用し、環境負荷の少ない方式で作られる。そして水着には、ペットボトル等から抽出されるリサイクル・ポリエステル。リサイクル・ナイロン、バナナ繊維、廃棄牛乳からできた繊維、そしてもちろんオーガニック・コットン、リサイクル・ウール。ウールも大切に飼育された羊から仕入れている。
これらは全て、環境に優しいリサイクル工程であることを証明するGSR認証や、安全とサステイナブルな工程を保証したエコテックス®などを取得している。もちろん段ボールや包装などのパッケージングもリサイクルされた素材で作られている。またサプライチェーンにおいても、WRAP、Sedex(サントリーが取得)、GOTS、BSCIといった認証を取得しているパートナーでがっちりと固められている。
サステイナビリティは「トレンド」ではない。それは私たちの基盤の中心にあるものだ。
会社紹介のページにはこう書かれている。SDGsという言葉が出る前から徹底的に素材とバリューチェーンにこだわって、全ての女性に美しさと快適さを感じてほしいと願う会社だ。
■ 包装もエコに Betterpackaging
e-コマース利用が増えてきて、コロナでますます加速しているが、そこで発生する梱包のゴミ問題を解決すべく、立ち上がった会社だ。素材、生産、使用、廃棄の4つのステージ全てにおいて徹底的に環境に優しいデザインとなっていて、工夫されたデザインにより封筒として何度か使えたり、廃棄の際も庭の堆肥として埋めておけば自然に帰る。この廃棄のしやすさについては、生分解性プラスチック認証を取得しており、オーストラリア基準のAS5810という、ミミズにも害がないことを確認する実験を含む厳しい審査を通過している。
ラインナップは封筒から、プチプチ、Tシャツなど商品を入れるポリ袋、コートのカバー、テープ、女性生理用品、最近必須アイテムなポリ手袋などかなり豊富。ロゴなどを入れてオリジナルのパッケージを作ることもできる。
ウェブサイトでは、商品の紹介に「私はこれまで一般的に使われてきたポリ袋と違った商品です」「私は4つのサイズに対応します」などと一人称が使われており、「I’m better(私は他より良いよ!)」というセリフがロゴ代わりに商品に印刷されている。
イギリス、アメリカ、中国にも倉庫を構えており、基本的には世界中に配送可能だ。残念ながらウェブサイト上の配送先に日本の選択肢は無いが、問い合わせれば輸入も可能と思われる。サンプルキットは15点入って5ドルで購入できるので気軽にトライできる。
更に会社としては、売上の10%を寄付にコミット、環境関係の研究やコミュニティ活動に投じている。また従業員には20時間の有給ボランティアを提供している。
■ セラミック会社では世界初取得 Florim
イタリアのセラミック会社、その歴史はさかのぼることおよそ60年、Floor Gresという会社がのちにCerimと合併して現在のFlorimとなった。イタリアでは2015年に法律によりベネフィット・コーポレーション「Società Benefit(SB)」が制定されている。Florimも2020年3月にベネフィット・コーポレーションとなり、会社名は「Florim S.p.A. SB」(S.p.A:株式会社)である。そして2020年12月にB Corp認証も取得した。
既にISO9001(品質), ISO14001(環境), ISO50001(エネルギー), ISO 45001(労働安全衛生), AEO(国際物流)、加えて商品にも環境ラベルなど、全般的に認証を取得している。B Corp認証取得は、「サステイナビリティ」という言葉が流行る前からずっと、長年にわたって追及してきたことを形式化したにすぎないと、社長のルッケーゼ氏はインタビューに答えている。工場には4.5万平方メートル(東京ドームの大きさに近い)のソーラーパネルが敷かれ、最適な条件下であれば工場を動かすのに必要な電力を100%賄える。水や生ごみも100%リサイクルする。他に環境保全に関する投資は8年間で約60億円近くになる。
これらの取り組みを一言で言えば、「Time is on our side」(時は我々の味方)。
1960年代、Floor Gresの頃に使われていた言葉ですが、2000年代にキャンペーンで復活させました。長期にわたって回復し、地球環境と近代化を尊重する、ということです。(社長インタビューより)
地球環境を生かすも殺すも我々次第。中長期的な視点で環境保全に取り組み、時代と共に発展するテクノロジーをうまく活用しながら生きていく。前向きな考えでB Corpという新しい概念にも賛同し、これからも飽くなき挑戦が続く。
■ 動画インフルエンサーの味方 MagicLinks
自らを「インフルエンサーテクノロジー会社」と名乗り、 Youtubeやインスタグラム、TikTokなどの動画インフルエンサーたちのマネタイズのサポートを行っているカルフォルニアの会社。現在2万人のインフルエンサーと契約しており、彼らの1億人以上のファンを相手に240億回の動画再生、総売上は1000億に迫る勢いである。
この壮大な影響力を持つメディア系の会社だからこそ、与えるインパクトも大きい。「Magiclinks for Good」(マジックリンクの力をより良い活動のために)として、児童養護施設の子どもたちをテクノロジーで支援する団体と手を組んだり、人種差別抗議のキャンペーン、コロナ禍での寄付、サステイナビリティ特集を組んだりと、社会的活動もしている。自分たちなりの環境活動も行っていて、二酸化炭素排出実質ゼロを2021年に実現しようとしている。
これらの取り組みは2013年の設立以来行われてきたことだが、これらのプロセスを公式化し、文書化してB Corp認証を取得するのに300時間かけたそうだ。これも会社が成長していくうえでの必要な投資として捉えている。
これから一番大事になってくるのは認証そのものではなく、B Corp精神に生き、我々が他の企業の参画を促すために積極的な役割を果たすことです。私は、B Corpが未来そのものであり、ハーバードビジネスレビューでB Corpが「地殻変動だ」と表現されたようなすごい進化であると、固く信じています。(Magiclinks プレスリリースより)