最近B Corp認証を取得した企業5社を紹介しよう。
■ 時計業界で初の取得 Solios
Soliosは、人や環境にやさしい素材でソーラー腕時計を作るスタートアップ。カナダのモントリオールにて2019年に誕生した。キックスターターでのクラウドファンディングで、わずか30分にして目標の約200万円を獲得、最終的には700万円近く集まった。同じ大学のサムとアレックスが世界中を旅し、この世にポジティブなインパクトを与えられるようなビジネスのアイディアを模索した。日本にも訪れており、ソーラー技術をどう時計に応用するかの知見が得られたようだ。普通の時計はだいたい2年に一度は電池が切れてしまい、電池の中身には有害物質も含まれるが、このソーラー時計なら半永久的に使える。しかもたった2時間のソーラー発電で6か月も持つ。そして太陽だけでなく家の人工的な明かりでも発電ができる。その他、バンドからプラスチック部品に至るまで環境負荷の少ない素材やリサイクル素材を使用し、もちろん耐水性や着け心地、薄さなどの基本的な時計としての使い勝手も妥協がない。それでいて3万円前後とリーズナブルな価格だ。
加えてRainforest trustとの提携により、時計1つ購入すると、サッカーグラウンド1つ分に相当する1エーカーの熱帯雨林保護のために使われる。また難病の子供たちを支援するMake a wish財団とのコラボ商品もあり、財団のカラーであるきれいなブルーを纏ったモデルで、購入と同時に約5000円が財団に寄付され、将来似たデザインのものは作らないという約束付きの限定500本だ。「明日の世界をより良くするのに小さすぎる活動なんて無い」と、従業員によるコミュニティ参画も行われている。
時計という成熟しきった産業への参入。サプライヤーの生産工程は既に効率化されていたが、環境への取り組みはまだまだだ。創業者二人のこだわりを貫くためにたくさんのサプライヤーと多額の資金を失った。
サステイナブルな生産を目指して努力しているふりをするブランドはたくさんありますが、それは彼らが宣伝したいイメージにすぎません。一部の人たちは我々が彼らと同じだと捉えてしまうので困るのですが、彼らを責めることはできません。だから我々は典型的な時計ブランドよりもやるべきことがたくさんあるのです。我々は本当に違うものを作って、我々を信頼すべき理由を示さなければなりません。飽和した業界でリソースの限られているスタートアップである以上、これは簡単なことではありません。
(共同創設者ディサブレイス氏、warrier princess インタビュー記事より)
そもそも我々の購買行動は、別に何かを傷つける意図をもってしているものではない。ただ気づいていなかっただけだ。だから何かシンボリックなものを作ってメッセージを伝えたかった。ある購入者からは、この時計を身に着けることで、生ごみの堆肥処理をしたり、より環境に優しい商品を購入したり、意識が変わったそうだ。
■ 警官や公務員のための銀行 BankVic
1974年、オーストラリア南東部のビクトリア州で、警察官とその家族の福利厚生を向上させる目的で設立された信用組合型の銀行で、今は医療従事者や救急隊、公務員などにも拡充され11万人の会員を持つ。利益は全てコミュニティのために使われ、過去10年で2億円以上の規模で寄付などが行われている。利用者にとっても最高のサービスを提供すべく、20近くの手数料を廃止し、デジタル化を推進、アニュアルレポートによると顧客満足度は95%だ。
50年近い歴史を持つ銀行を率いるファシオ氏は2018年にCEO職に就いた。それ以来フォーカスしているのは、その軌跡を辿って過去とつながり、ルーツに立ち返ることだ。銀行が大きくなるにつれ利益重視となり、過去との乖離が生まれてきた中での原点への回帰だ。
我々にとって、リードするというのは尽くすということです。我々はコミュニティのために尽くす人たちのために尽くします。会員の誰かにとって最悪な日は、本当に最悪な日です。誰かが必要としている時、そこに我々がいるかどうかが大事です。
(ファシオ氏、CEO Magazineのインタビュー記事より)
■ ベルギー発タンブラー Kambukka
Kambukka(カンブッカ)とはスワヒリ語で楽しむ、プラスになるといった意味だ。その高性能でスタイリッシュなデザインから、日本のテレビショッピング、ショップチャンネルでも紹介され、フリマ界にも出回っている。
長く使い続けるために大事な衛生面では、Snapclean®という技術を開発し、簡単に付け外しのできる蓋の構造によってきれいに洗うことができる。
タンブラーと言えばノベルティグッズが多く、漏れたり品質の悪いものばかり。創業者のロウェット氏がそう感じている中で、Contigoというスイスの高品質なドリンクウェアブランドと出会い、2009年から卸売りを始め、10年後の2019年夏にKambukkaを立ち上げた。
お客様が自分のボトルを誇りに思っていることが私にとって大事です。
(ロウェット氏、onlyhumansのインタビュー記事より)
既に中国でも展開されているようだが、ヨーロッパやアジアではこれからもっと開拓の余地があると考えており、今後の展開が期待される。
■ カリフォルニア海辺街から誕生 Patara
Patara Shoesは、軽くて心地よくて、麻、コルク、オーガニックコットン、リサイクルPET、天然ゴムなどの素材を使用したエコフレンドリーな靴を作る会社だ。
キリアンとクリスチャンの2人の兄弟がタイを旅した時、ある日はビーチに、ある日は美しい都市を歩き、どんなシチュエーションにも合う1足の靴が欲しいと感じた。カジュアルでありながらスマートで、とても軽くて快適で、ありとあらゆる冒険に対応できる靴が欲しい、そこにサステイナブルを掛け合わせた。
長い交渉のプロセスを経て、小さな工場と契約。コストは他の靴メーカーが大量生産している工場よりも多くの費用を支払っているが、彼らの本来の目標は、他と本当に違うものを作ること。少量生産で他人とは違うものを所有するという、特別な気持ちを顧客に約束していると、Her campusのインタビューで答えている。
■ サステイナブルな旅 SA EXPEDITIONS
マチュピチュ、アマゾン、南極に至るまでサステイナブルな旅のコーディネーションを行うカルフォルニアの会社。ペルーへのツアーを催行する小さな会社として2010年に始まり、10年後の2020年にB Corp認証を取得した。
人気の観光地は多くの人の来訪によりその土地の保全を必要とし、悪い面が露呈している部分もある。しかし本来、旅というものは、自分の世界を広げ、観光地にも経済的な便益を与える良いもののはずだ。共同創立者のスタンツィアーノ氏は一度CEOの座を離れ、200日以上にわたってそれらの観光地を巡り、企業としてどのように貢献できるのかを模索するために歩いた。そして顧客は自然と歴史の重みを感じ、観光地の経済は潤い、会社の利益は保全のために使われるような旅を提供している。さらに、Carbon Credit Capitalと提携し、その旅程で排出する二酸化炭素を打ち消す排出権取引で、実質CO2ゼロの旅となっている。
B Corpの取得には結果的に3年の月日を費やして組織の構造変革も経たが、それでも変わったことはB Corpのロゴを使えるようになった程度だという。創業以来ずっと顧客に約束してきた通り、エシカルでカスタマイズされた旅をこれからも提供し続ける。